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エーゲ海の由来&イカロスの翼

エーゲ海という名の由来

 ディオニュソス神が領するナクソス島にアリアドネを残し、テセウス一行を乗せた船はひたすらアテネ目指して航海を続けました。

 ところでテセウスが人身御供としてアテネを発つ時、父王アイゲウスに、
 「もし無事で帰ってこられた時は白い帆を掲げましょう。黒い帆が発っていたなら私は死んだものと思ってください」
と言い残してクレタ島に向かったのでした。

 ナクソス島を出た時、船は黒い帆を張っていたのでした。途中で気がついて白に張り替えるべきでした。しかしテセウスも人の子、アリアドネをナクソス島に残してきたことが気がかりで心中穏やかではなく、父王との約束などすっかり忘れていたのです。
 それは船中の者たちとて同じこと。クレタ島から脱出させてくれ、船旅を共にしていた王女の非在を誰もが悲しんでおり、これまた帆を替えるのを忘れていたのでした。

 一方老いたるアイゲネス王は、息子の帰還を一日千秋の思いで待っていました。ある日岸壁に立って海上を見ていると、遠くにテセウスの船らしきものが確認されました。
 「さて帆の色は?」
 徐々に近づく船の帆を見るに黒ではないか。
 老王はよろめき、絶望のあまり断崖から身を投げ出して死んでしまったのです。以来ギリシャ本土からクレタ島までを包み込む内海を、アイゲネスを偲んで「エーゲ海」(「Aegean Sea」)と呼ぶようになったのです。

 なおテセウスは、アリアドネとの別れ、父王の不慮の死と相次ぐ不幸に見舞われながら、めげることなくすぐにアテネ王となり、後代の世界史に冠たる都市国家アテネの礎(いしずえ)を築いたのでした。

イカロスの翼

 話は転じて。
 テセウスがラビリントスから逃げ出したこと、その手引きをしたのが愛娘アリアドネであること、愛娘はどうもテセウスと“愛の逃避行”をしてしまったらしいこと…。事の一部始終を知ったミノス王の怒るまいことか。
 「誰か要らざる入れ知恵をした奴がいるに違いない」
 厳しい捜査を命じた結果、すぐにダイダロスであることが割れました。

 「妻の時といい、今度といい。あの老いぼれ大工め。もう許しておけん !」
 ミノス王の怒りはダイダロスに向けられました。
 「罰としてあやつを迷宮に閉じ込めよ。息子のイカロスも一緒にな !」
 王の命令は直ちに実行に移され、ダイダロス親子はラビリントスに幽閉されてしまいました。

 もちろん糸玉の持ち込みなど許されるわけもありません。迷宮の主のミノタウロスは退治されていなくなったとは言え、脱出はほぼ絶望的です。それでも生への執着心の強い若いイカロスは、ここから一刻も早く脱出したくてたまりません。
 「お父さん、どうする?何か抜け出すうまい方法はないの?」
 「まあ、そう焦るなって。きっと何か良い方法があるはずだ」
とは言ったものの、名工ダイダロスにもどうにもいい脱出法が思い浮かびません。

 しかしさすがは“古代発明王”です。必要に迫られて、またまた取って置きのアイディアが閃いたのです。
 「そうだ、空だ ! 地べたをたどって逃げられないのなら、空から鳥のように飛んで逃げればいいではないか !」
 2次元平面発想が3次元立体発想へと飛躍した瞬間です。

 ダイダロス親子が幽閉されたのは「塔」だったという説もありますが、「迷宮説」の方が広く流布されています。だとしたらラビリントスは地下迷宮ではなく、クノッソスの大地を深くくり抜いただけの仰げば空が見える式の迷宮だったことになります。

 ダイダロスは優れた科学者でもありました。かのレオナルド・ダビィンチが約3千年後に思い描いたことを、この時まさに思い立ち、かつ実現化を試みたのです。古代科学者は鳥の体をつぶさに観察し、それを模して二人分の翼を作りました。
 長い歳月の間に迷宮内に散らばり、堆積している鳥の翼をかき集め、人間用の大きな翼を作ったのです。

 「イカロス、お前はこれをつけろ。よいか、いい気になってあまり高く飛ぶでないぞ」
ダイダロスはそう注意を与えて、一方の翼を息子に与えました。
 こうして2台の「にわか飛行機」は迷宮から飛び立ち、空高く舞い上がりました。若いイカロスは父の忠告にも関わらず、天空に舞い上がって下界を見下ろしつい嬉しくなり、上へ上へと上昇し続けました。
 「ダメだ、イカロス。そんなに高く昇るんじゃない。危ないから降りるんだ !」
が、父の必死の叫び声もイカロスの耳には届きません。

 案の定あまりにも太陽に近づき過ぎて、接着剤として使用していた蝋(ろう)が溶け始めました。“有頂天”のイカロスはそれすら気がつきません。
 「ああっ」という甲高い叫び声が上がるとともに、イカロスの翼はふわふわ宙を漂い、イカロス自身は真っ逆さまに、ある島にほど近い海へと落下したのでした。
 イカロスが墜落死した海を、彼の名にちなんで「イカロス海」、そして近くの島を「イカロス島」と名づけられました。

 以上、長かった「エーゲ海、クレタ島物語」の終了です。  -  完  -

 (大場光太郎・記)

参考・引用
『ウィキペディア』-「エーゲ海」「エーゲ文明」「ミノア文明」「ミーノース」「パーシパーエー」「アリアドネー」「イーカロス」などの項
『ギリシャ神話を知っていますか』(阿刀田高著、新潮文庫刊)

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コメント

とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!

投稿: 株の入門 | 2014年2月 6日 (木) 11時07分

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