日本の歌百選
-昔の名叙情歌が消えかねない現状、一定の評価のできる「百選」と言える-
少し前のことになりますが、『フォレスタの「夏は来ぬ」』作成のためネット検索で調べているうち、「日本の歌百選」というのが選定されていることを知りました。
そういえば当今は「何とか百選」流行(ばや)りです。当ブログでも以前、「かながわの木百選」というのがあり、近所の名刹・妻田薬師の大クスノキがその一本に選定されていることをご紹介しました。
「日本の歌百選」は2006年、文化庁と日本PТA全国協議会によって選定され、翌2007年1月14日発表されたものですが、多分に「百選ブーム」にあやかろうとしたことは否めないのでしょう。
ただこのまま腕をこまねいていれば、昔の童謡、唱歌、歌謡曲などの名叙情歌が歌われなくなっていく一方ですから、私のような「古い歌好き」人間には大歓迎の百選です。
この企画は、まず一般から募った895曲から選考委員が選出したものです。応募条件は「日本語の歌詞」の歌であったため、例えば『埴生の宿』のように元々は日本国外で作られたものの日本で日本語の訳詞によって親しまれている歌も数曲含まれています。
また「百選」という名称ですが、選考の結果100曲に絞り切れなかったため「101曲」が選定されました。
どんな歌が選ばれたのでしょうか?まずは曲名だけですが「50音順」で以下に列記してみます。(ただし『花』は2曲あるなどの理由で、特に作詞者・作曲者名を記したものがあります。)
1.仰げば尊し 2.赤い靴 3.赤とんぼ 4.朝はどこから 5.あの町この町 6.あめふり 7.雨降りお月さん 8.あめふりくまのこ 9.いい日旅立ち 10.いつでも夢を 11.犬のおまわりさん 12.上を向いて歩こう 13.海 14.うれしいひなまつり 15.江戸小唄 16.おうま 17.大きな栗の木の下で 18.大きな古時計 19.おかあさん 20.お正月 21.おはなしゆびさん 22.朧月夜 23.思い出のアルバム 24.おもちゃのチャチャチャ 25.かあさんの歌 26.風(西條八十訳詞、草川信作曲) 27.肩たたき 28.かもめの水兵さん 29.からたちの花 30.川の流れのように 31.汽車 32.汽車ポッポ(富原薫作詞、草川信作曲) 33.今日の日はさようなら 34.靴が鳴る 35.こいのぼり 36.高校三年生 37.荒城の月 38.秋桜 39.この道 40.こんにちは赤ちゃん 41.さくら貝の歌 42.さくらさくら 43.サッちゃん 44.里の秋 45.幸せなら手をたたこう 46.叱られて 47.四季の歌 48.時代 49.シャボン玉 50.ずいずいずっころばし
51.スキー 52.背くらべ 53.世界に一つだけの花 54.ぞうさん 55.早春賦 56.たきび 57.ちいさい秋みつけた 58.茶摘み 59.チューリップ 60.月の沙漠 61.翼をください 62.手のひらを太陽に 63.通りゃんせ 64.どこかで春が 65.ドレミの歌 66.どんぐりころころ 67.とんぼのめがね 68.ないしょ話 69.涙そうそう 70.夏の思い出 71.夏は来ぬ 72.七つの子 73.花(喜納昌吉作詞、作曲) 74.花(武島羽衣作詞、滝廉太郎作曲) 75.花の街 76.埴生の宿 77.浜千鳥 78.浜辺の歌 79.春が来た 80.春の小川 81.ふじの山 82.冬景色 83.冬の星座 84.故郷(ふるさと) 85.蛍の光 86.牧場の朝 87.見上げてごらん夜の星を 88.みかんの花咲く丘 89.虫の声 90.むすんでひらいて 91.村祭 92.めだかの学校 93.もみじ 94.椰子の実 95.夕日 96.夕焼小焼 97.雪 98.揺籃(ゆりかご)のうた 99.旅愁 100.リンゴの歌 101.われは海の子
以上見てみますと、『はて、こんな歌あったか?』と思うのはわずかで、ほとんどの歌は歌詞とメロディがすらすら出てくるおなじみの歌ばかりです。
少し前『叙情歌とは何か』シリーズを公開しましたが、選定された101曲のすべてが「叙情歌の条件」をクリアーしそうです。
「日本の歌百選」について、時代区分として「戦前の歌」「戦後の歌」という分け方が一番分かりやすいかと思います。そこでざっと数えてみたところ、「戦前の歌 7割」「戦後の歌 3割」くらいの比率となりました。
戦前の歌がこれだけ多く今日でも支持されている(歌い継がれている)ということは、それまでの時代、いかに優れた歌が多かったかという証明であるように思われます。
対して、『時代』『世界に一つだけの花』『花』などが選定されているのは、最近中島みゆきやSMAPや喜納昌吉が歌って大ヒットして印象が強かったせいだと考えられます。(個人的には、昭和5、60年代一世を風靡した荒井由美(松任谷由美)の歌が一曲もないのは意外です。)
時代を超えて歌い継がれてきた古い歌は、今日では評価が定まっています。が、最近の歌ほど(今後とも残るか、消えていくか)流動的な要素が多分にあるように思われます。 (以下「続」につづく)
(大場光太郎・記)
関連記事
『フォレスタの「夏は来ぬ」』
http://be-here-now.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-efdc.html
『叙情歌とは何か(5)』
http://be-here-now.cocolog-nifty.com/blog/2012/08/post-f8de.html
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コメント
昭和が終わって平成の時代がはじまった1989(平成元)年に、忘れ去られつつある
「うた」を日本全国の人々とともに掘り起こし、つぎの世代に伝える文化遺産として集大成して、記録にとどめようという趣旨のもと行なわれた企画で、明治・大正・昭和の歌の中から次代へ残したい歌を一人一曲選び、ハガキなどで投票した結果が、応募総数65万7千通あまり、総曲数は5千曲にものぼったという大調査です。
NHKは、1989年(平成元年)11月4日、「日本のうた・ふるさとのうた100曲」を発表しました。
なお、これをもとにNHKは、テレビで「日本の名曲10曲」として、8時の番組の後の時間を使って、1週間ずつ1年間にわたり放送していますので参考に。
■■NHKTV 「日本の名曲10曲」■■ 1990
「荒城の月」 土井晩翠作詞、 滝廉太郎作曲 1901
「波浮の港」 野口雨情作詞、 中山晋平作曲 1928
「叱られて」 清水かつら作詞、 弘田竜太郎作曲 1920
「この道」 北原白秋作詞、 山田耕作作曲 1927
「浜千鳥」 鹿島鳴秋作詞、 弘田竜太郎作曲 1919
「影を慕いて」 古賀政男作詞、 古賀政男作曲 1931.1932
「出船」 勝田香月作詞, 杉山長谷夫作曲 1928
「宵待草」 竹久夢二作詞、 多 忠亮作曲 1918
「花」 武島羽衣作詞、 滝廉太郎作曲 1900
「からたちの花」 北原白秋作詞、 山田耕作作曲 1925
投稿: ktos | 2018年3月24日 (土) 10時54分
ktos 様
「日本の歌百選」につき、貴重な情報をお寄せいただき大変ありがとうございます。
ktos様の日本の懐かしい良い歌に対する熱い想いが伝わってきて、私も思わず嬉しくなってしまいました。
NHKの「日本のうた・ふるさとのうた100曲」といい、文化庁と日本PТA全国協議会による「日本の歌百選」による選定といい、大変優れた試みだったと改めて評価したいと思います。
私は元々(ご存知かどうか)『二木紘三のうた物語』サイト愛聴者で、そのご縁で当ブログも開設に至った次第ですが、『同うた物語』が果たした役割も大きかったのではないかと考えています。
以後のBS日本テレビ『こころの歌』のフォレスタコーラスやTBSの同様の歌番組も高く評価できます。特に私は当ブログ「フォレスタコーラス」カテゴリで、同コーラスが歌った日本の名曲などを取り上げてきましたが、今後とも息長く活動を続けていってもらいたいものと念願しております。
お挙げになられた NHKTV「日本の名曲10曲」は本当にいい歌ばかりですね。明治末期から、大正時代の「赤い鳥」運動が契機となった童謡・唱歌中心ですが、ジャンルを越えた名曲ぞろいで、題名に接するだけで何かしらほのぼのとする心持ちになります。ありがとうございました。
投稿: 時遊人 | 2018年3月25日 (日) 00時56分
時遊人様
ブログ見させてもらっています。今なんでも「名曲」のテレビ歌の世界はおかしい、これで良いかと思ってしまいます。
寺山修司編「日本童謡集」(光文社1972)という本があって、その前書きには、『優れた「童謡」というものは、長い人生に二度あらわれる、一度目は子供時代の歌として、二度目は大人になってからの歌としてである。』・・と。そして、『映画に主題歌があるように、人の一生にもそれぞれ主題歌があるのではないだろうか。そして、それを思い出して唄ってみるときに、人はいつでも原点に立ち戻り、人生のやり直しがきくようなカタルシスを味わうのではないだろうか。』・・として、広い分野の歌を集めてあるのが特徴。『赤い靴』『青い眼の人形』から 、古賀メロデー『影を慕いて』『人生の並木路』・・など優れた童謡としてあげられている。
NHKが「日本のうたふるさとのうた」と題し、童謡とか愛唱歌などを主に100曲を選んでいて(1989年11月4日放送)、このなかに「赤い靴」などとともに、「影を慕いて」が同じようにはいってる。これを「童謡新聞」という童謡を主としたHPで紹介してます。「明日に残す心に残る歌」として、「さくら貝の歌」・「影を慕いて」「あざみの歌」など幾つかで、『唱歌童謡の中に「影を慕いて」が含まれる』とあります。(童謡新聞 「心の故郷」)
温かい家庭の和と憩いを夢見た古賀政男
養女に「おとうちゃん」と呼ばれて嬉しくて涙を流した
「明日に残す心に残るうた」唱歌童謡の中に「影を慕いて」含まれる
歌は年月を超え、混然一体「童謡」の中に入ったとき、[愛唱歌]になると思うが、80年を超えて「影を慕いて」は、今や「古賀メロデー」を越えて,童謡その他の愛唱歌と渾然一体になって、[日本の愛唱歌][日本の名曲]「人生の主題歌」になっているのではないでしょうか。
■[NHK日本のうた・ふるさとのうた100曲]1989年(曲目リスト)■
http://www.geocities.jp/fujiskre/ka96.html
(年代別曲目リスト)
http://www.geocities.jp/fujiskre/ka97.html
こちらを作りましたのでご覧ください。
【日本の音楽文化遺産】日本の名歌・名唱を語ろう!!
http://www.10ch.tv/bbs/test/read.cgi?bbs=history&key=466329511&ls=50
投稿: ktos | 2018年3月25日 (日) 12時08分
重ねましてのコメントありがとうございます。
確かにテレビは「業界」ですから、日本の懐かしい良い歌を歌う番組を制作すると愛好家が多いから視聴率が取れそうだぞ、との考えの下、BS日テレ「日本こころの歌]フォレスタのような歌番組を企画するケースが多いかもしれません。
だとすると動機はいささか不純であり、またフォレスタコーラスなども仔細にチェックしていけば瑕疵が見つかるものです。
しかし私は、歌だけにとどまらず日本の伝統文化の次世代への継承に赤信号が灯り始めている昨今、まずもって次の時代に引き継いでくれるような試みなら率直に評価すべきだと考えています。
それが歌の世界ではフォレスタコーラスなどですよね。BS日テレの「こころの歌」やフォレスタコンサートでは年配者が圧倒的で、次世代へのいい歌の継承という点で気にはなりますが、広義の啓蒙活動ととらえてある程度長いスパンで見守っていくべきなのかな、とも思います。
ktos様が列記されている各名曲のほとんどをフォレスタ等が既に歌ってくれています。そうやって長く残っていってほしい良い歌が、今後ともさまざまな場面で歌い継がれていってほしいと念願致す次第です。
投稿: 時遊人 | 2018年3月26日 (月) 00時13分