フォレスタの「雨のブルース」
-出ました !「平成のブルースの女王」を決定づける『吉田静の雨のブルース』 !-
(この歌のYouTube動画のURLのみ表記。)
http://www.youtube.com/watch?v=M9MUiU-Wjmk
雨のブルース (昭和13年、作詞:野川香文、作曲:服部良一)
- 雨よふれふれ
なやみを 流すまで
どうせ涙に 濡れつゝ
夜毎なげく身は
あゝ かえり来ぬ
心の青空
すゝり泣く 夜の雨よ - くらい運命に
うらぶれ果てし 身は
雨の夜路を とぼとぼ
ひとりさまよえど
あゝ 帰り来ぬ
心の青空
ふりしきる 夜の雨よ
(※ 著作権消滅曲)
最近の当ブログアクセス検索フレーズに、「フォレスタ 雨のブルース」がちらほら見受けられました。『んっ?フォレスタは雨のブルースなんて歌ってないぞ』と思っていました。
ところでつい先日everstone04さんが、直近の『BS日本 こころの歌』収録の動画をまとめて投稿して下さり、その中に『雨のブルース』を見つけ、これだったのか、と納得しました。
淡谷のり子の同じブルースであれば、『歌うは“あの人”しかいないでしょ』と思いながらも、聴いてみるまでは誰が歌っているのか分かりません。取るものも取りあえず聴いてみたところ、やっぱり“あの人”-吉田静さんなのでした。
一言で言えば、圧倒されるような堂々の「吉田静の雨のブルース」です。
「くらい運命に うらぶれ果てし身は 雨の夜路を とぼとぼ ひとりさまよえど」
『雨のブルース』は歌詞をたどってみても分かるとおり、一見すると「暗い歌」です。しかし格調高い野川香文の歌詞と服部良一の曲が、救いようのない“引かれ女の小唄”に堕すことなく、かえって戦前歌謡曲の名叙情歌にまで高めています。
この歌が発表された昭和13年(1938年)は、日本がいよいよ戦争へとのめり込みつつあった時代でした。今日の私たちはその後、泥沼の日中戦争、日米戦争、広島・長崎への原爆投下、敗戦、米進駐軍による占領という痛ましい出来事が起こったことを知っています。
これは戦後の『星の流れに』(菊池章子)や『東京ブルース』(西田佐知子)にも共通することですが、この歌のヒロインは、何やら「その時代の負(ふ)の側面」を一身に背負って耐えている女性の姿にさえ思えてくるのです。
同じく吉田静さんが独唱した『別れのブルース』が、女声フォレスタを代表する一曲であることは今さら言うまでもありません。あの時は若々しい吉田さんでしたが、今回の『雨のブルース』はさらに歌の心に入りきった、円熟味を増した吉田さんの名唱であるように思われます。
それにこの歌の吉田さん、女声フォレスタ中の「プリマドンナ」のような堂々たる風格すら漂わせています。
上掲の2番目の歌詞の吉田さんの独唱にかぶさるような、「アーアーアー」の高音のスキャット。白石さんや中安さんの声ではないようです。新メンバーの内海万里子さん?印象的な声質です。
ピアノ演奏は吉野翠さん。ショパンのプレリュードの名曲『雨だれ』に迫るなどと大げさなことは言いませんが、「ふりしきる夜の雨」の感じをよく表わし得た演奏です。
女声フォレスタのレパートリーは『雨のブルース』にまで広がりました。『星の流れに』や『東京ブルース』まであと一歩です。もうここまで来たら、この二つの名ブルース、是非吉田さんに歌ってもらいたいものです。
(大場光太郎・記)
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