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「就職偏差値」が異様に高い2つの地方大学

 -就職超氷河期が続く当今、入学偏差値より就職偏差値が重要らしい-

 例えば東大、京大、北大、東北大などの旧帝大系や早慶などの有名私大。受験生たちの大学のブランド志向は依然根強いものがあります。しかし就職超氷河期の今日、これらの名門大学ですら希望の企業に就職できないのが現状です。

 そんな中、有名大学ほど「入学偏差値」は高くないものの、一流企業に抜群の就職実績を誇る“お買い得”大学が地方に存在するといいます。その好例として今年4月、秋田国際教養大学(AIU)について記事にしました。
 つい先週どこかのテレビ番組でこの大学を取り上げたのか、その夜の10時台から『「秋田国際教養大」急成長の秘密』へのアクセスが急増し、翌日の「検索フレーズランキング」で1位以下を関連フレーズが占めました。受験生を中心にその父兄たちなのか、「就職率のいい大学」への関心がいかに高いかを如実に示す一つの指標だろうと思われます。

 今回『日刊ゲンダイ』紙に、またまた地方の2つの“お買い得”大学が紹介されましたので、早速当ブログでも取り上げてみたいと思います。

立命館アジア太平洋大学(APU)

 この大学があるのは大分県。2000年に開校しました。入学偏差値は50~55と中堅校レベルにも関わらず、就職率は95%を超え、国内学生の1部上場企業への就職率は約36%を誇るといいます。
 ちなみに、入学偏差値が65~70の慶応大学の1部上場企業への就職率は約43%とさして大差なく、偏差値を超えたAPUの人気も分かろうというものです。

 今年は三菱重工業に6人の内定者を出しました。同社の事務系採用数では、東大、一橋大、早慶といった名門大学を抜いてトップだそうです。
 また11年度の就職先でも、新日本製鉄、旭化成、コマツ、住友化成、東芝、三菱商事、野村證券、三井住友銀行、武田薬品工業といった一流企業がズラリと並びます。

 立命館アジア太平洋大学の強さの秘密は何なのでしょうか?
 これは秋田国際教養大学にも言えたことですが、ズバリ「グローバルな人材育成」を主眼に置いていることにありそうです。
 5800人いる学生の約半数が世界83カ国からの外国人留学生で、日本の大学とは思えない雰囲気だといいます。1年次の講義は日本人と留学生が一緒の少人数、学生寮では日本人と外国人との同室が必須なのです。互いに理解し合えないと、寝食すら共にできないハードな環境です。

 とは言っても、人種や国籍が違う以上、摩擦や軋轢(あつれき)が当然のように起こります。実は大学側の狙いはそこにあるのです。企業が重視するコミュニケーション能力を身につけさせるために、人種や国境の壁を乗り越える体験を多く積ませるわけです。そういう体験の繰り返しで、日本人学生の意識も変わるといいます。
 その結果、企業の採用面接で「海外で働けますか?」と聞かれ、「途上国はちょっと…」という(他大学の)学生もいる中、<自分から手を挙げて、「どこでもいいから行かせてほしい」と言うのがうちの学生の特徴だ>と、就職担当者も誇らしげに語っています。

小樽商科大学

 北海道小樽市にあるのが小樽商科大学です。この大学は国立にしては珍しい社会学科系単科大学です。上のAIU、APUのような新興大学ではなく、戦前の小樽高等商業学校を前身としています。小樽高商時代は文科系の教育機関だったため、『蟹工船』(戦前)の小林多喜二や「チャタレイ裁判」(戦後)で有名な伊藤整などの作家を輩出しました。
 それはともかく。同大学も一流企業への就職実績では、知る人ぞ知る名門国立大だというのです。

 入学偏差値はこちらも55と、他の地方の国立大学と変わりません。が、就職先の平均年収から算出される就職偏差値は60を超え、これは北大や東北大より上なのです。
 11年度は、メガバンクをはじめ日本生命、東京海上火災保険など、保険や金融業界を中心に実績を残しています。
 「毎年1人は必ず採用している。学生のレベルは旧商校の一橋大学と遜色はない。先輩で活躍している人が多く、役員になった人もいる」と、ある財閥系総合商社の人事部長も、同校の実力にこう太鼓判を押しています。

 小樽商大の抜群の就職実績の秘密は何なのでしょうか?
 「企業の評価が高いのは、同校の実践的キャリア教育です。地域企業の課題解決に取り組むインターンシップは、連携している高校生や卒業生まで巻き込んで長期間行います。こうした幅広いネットワークが就職活動の強みになるし、高校生への人気も続く。大学には一石二鳥です」(ジャーナりストの溝上憲文氏)

 東大が今年になって「グローバル化に対応できる学生の育成」などと言い始めています。我が国トップとされる東大が、秋田国際教育大などの教育方式の右倣えを始めたのです。
 灘校の橋本武先生の教え子の濱田純一総長殿、「遅いでしょ、それでは」。しかしこれは学長個人の責任というより、教授会などを含めた旧弊かつ硬直化したシステムの問題と言うべきなのでしょう。

 いずれにせよ大学の選択は、もはや名門云々ではなく、教育や就職支援の中身を吟味する時代になったといえそうです。

 (大場光太郎・記)

参考・引用
『日刊ゲンダイ』-「就職偏差値が異様に高い立命館アジア太平洋大学と小樽商科大学(10月30日9面)
関連記事
『「秋田国際教養大」急成長の秘密』
http://be-here-now.cocolog-nifty.com/blog/2012/04/post-c7ce.html
『「銀の匙」と灘校名物国語教師』
http://be-here-now.cocolog-nifty.com/blog/2012/06/post-762a.html

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