« 小沢一郎、12日「無罪判決」 !? | トップページ | 「シロアリ解散」、12月16日投開票か »

フォレスタの「旅愁」

  ふるさとにあゝ忘れ物虎落笛(もがりぶえ)   (拙句)


    『フォレスタ-旅愁』新(撮り直し)ヴァージョン
     (この動画は削除されました)
    『フォレスタ-旅愁』旧ヴァージョン
     http://www.youtube.com/watch?v=fy5vhrssm_I

    旅 愁    (オードウェル原詞・作曲、犬童球渓)

1.更けゆく秋の夜 旅の空の       2.窓うつ嵐に 夢もやぶれ
 わびしき思いに ひとり悩む        はるけき彼方に こころ迷う
 恋しや古里 なつかし父母         恋しや古里 なつかし父母
 夢路にたどるは 故郷の家路       思いに浮かぶは 杜のこずえ
 更けゆく秋の夜 旅の空の         窓うつ嵐に 夢もやぶれ
 わびしき思いに ひとり悩む        はるけき彼方に こころ迷う 

 ある一定以上の方にとっては、何とも懐かしい歌なのではないでしょうか。私のような“望郷者”は、不用意にこの歌を聴こうものなら、たまらず涙がどっと溢れてきてしまいます。

 思えば、この歌は私が小学校5年生の秋音楽の授業で習ったのでした。習い覚えてほどない「更けゆく晩秋の夜」、学校の図書館で借りたある本を読みふけっていました。当時お世話になっていた、郷里町の母子寮の我が家の八畳一間の壁に寄りかかりながら。
 母と妹は既に寝ていたようです。物音一つせず、山形県内陸部の田舎町の夜はしんしんと更けていくばかりです。(その頃からでしょうね、私の心の中に「孤独」という厄介な分離の観念が忍び入ってきたのは。)

 読書が一くぎりついて、本を膝の上に置いて目を上げたとき、ふとこの歌の歌詞とメロディが思い浮かんできました。そしてしみじみ思ったのです。
 (オレもそのうち、遠くのどこがさ、行がんなねなだべねぇ…) 
 『旅愁』が、故郷を遠く離れた人の、しみじみ故郷を想っている歌であることを理解した上でそう思ったのです。

 それより前、三橋美智也の『赤い夕日の故郷』が流行(はや)っていた頃、私は小学校2年生でした。だからその頃は、いつか『赤い夕日の故郷』を郷里町を遠く離れて聴くことになる、というような想像力はまだありませんでした。

 しかし5年生ともなると、「現実」や「世間」というものが少し見え始めてきます。以前『故郷を離るる歌』でも述べましたが、寮内のだいぶ年長者が、中学校卒業と同時に集団就職のため上京して行く姿をずい分見てきました。地元駅頭での見送りに、小学生の私なども毎年のようにかり出されたのです。

 2、3歳上と比較的年の近い先輩には、時に思い切ってぶん殴られるようなこともありました。しかしうんと年長の人たちからは、「コタロく~ん !」と“めんごがられ(可愛いがられ)”ました。
 そんな人たちが早春のある日、昔々の出征兵士よろしく、大勢の人たちが集まる中、中学の応援団の掛け声で始まる校歌や応援歌で見送られて汽車に乗って行ってしまうのです。
 子供ながらに、『オレもそのうち…』と思うのも無理からぬところです。

 『旅愁』について簡単にみていきます。
 ご存知のとおり、元々はアメリカの歌です。原曲『Dreaming of home a mother』(「ふるさとと母を夢見て」)は、ジョン・P・オードウェル(1824-1880)によって作られました。
 これを明治40年(1907年)訳詞したのが、犬童球渓(いんどう・きゅうけい)です。犬童は熊本県人吉市出身で、東京音楽学校(現・東京藝術大学)を卒業後、各地を転々としました。新潟県の新潟高等女学校に赴任していた明治40年(1907年)、この歌を訳詞したのです。

 この歌は、同年8月に発売された『中学教育唱歌集』で取り上げられ、同唱歌集に収められた同じく犬童球渓訳詞の『故郷の廃家』とともに、その後広く歌い継いでいかれることとなりました。
 まさに「旅愁者」そのものだったと言っていい犬童訳詞の『旅愁』は、今日でも強い訴求力を失うことなく、2007年「日本の歌百選」の一曲に選定されました。(なお米国でこの歌は“忘れられた歌”であるようです。)

 この『旅愁』を、最近女声フォレスタが歌い直しています。
 「コーラスはかくあるべし」と思うような、新人の内海真理子さん、上沼純子さんを加えた5人の新女声フォレスタによる見事なコーラスです。低音部はメッツォ・ソプラノの吉田静さんのみかと思ったら、このコーラスでは前列の白石さん、上沼さん、吉田さんの3人が担当しているようです。そして高音部を後ろの中安さんと内海さんが。

 5人の息がぴったり合った、完成度の高いコーラスという気がします。そこで門外漢の「優れたコーラス」の勝手な定義。
 「優れたコーラスとは、高音と低音が絶妙に調和し合ってかもし出される、心地良いハーモニーのことである。」

 さりとて、旧ヴァージョンも捨てがたいところがあります。私は、今年春削除されたこの『旅愁』動画をよく聴いていましたから。
 矢野聡子さん、小笠原優子さん、そして結成以来ずっと女声フォレスタを担い続けてきた白石佐和子さん、中安千晶さんの4人によるコーラスです。この歌では、前列の矢野さんと中安さんが高音パートを、後ろの白石さんと小笠原さんが低音パートを担当しているようです。

 ああ、そうそう、他の歌でもよく見る、あの大きな白い月のバック。これも含めて、矢野さん、小笠原さんが現在活動休止中であるだけに、なにやら懐かしい感じがしますね。

 なお末尾に掲げますが、この旧ヴァージョン、NHKが、天才女流詩人の金子みすずの特集番組でBGMとして借用しているようです。(以下独り言)へぇ~NHKさん、『BS日本 こころの歌 フォレスタコーラス』をしっかり認識し、評価もしてるんだ。だったら、年末の例の国民的ビックイベントに、なるべく早くフォレスタを出演させてくださいよ。

 (大場光太郎・記) 

『フォレスタ-旅愁』NHK借用、金子みすず画像ヴァージョン
http://www.youtube.com/watch?v=ekWF_7eftN4
関連記事
『フォレスタの「赤い夕日の故郷」』
http://be-here-now.cocolog-nifty.com/blog/2012/06/post-6d8d.html
『故郷を離るる歌』
http://be-here-now.cocolog-nifty.com/blog/2010/04/post-d5d3.html

|

« 小沢一郎、12日「無罪判決」 !? | トップページ | 「シロアリ解散」、12月16日投開票か »

フォレスタコーラス」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。