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フォレスタの「夜霧のブルース」

 -ノスタルデック上海の夜霧に消えて行く、硬派でダンディな男の後ろ姿-

    (「フォレスタ 夜霧のブルースHD」YouTube動画)
     http://www.youtube.com/watch?v=XLK4FgY_6u8

 『夜霧のブルース』(昭和22年)を歌ったのはディック・ミネです。戦時中の我が国の敵性音楽追放政策により、芸能活動からスポイルされていたディック・ミネにとって復活を果たした曲であり、彼の代表曲ともなっています。
 作詞は島田磐也、作曲は大久保徳二郎です。このコンビといえば、戦前同じくディック・ミネが歌ってヒットした『上海ブルース』が思い出されます。(ただし『上海ブルース』では作詞の島田磐也は北村雄三という別名を用いている。)

 この2つの曲は作詞、作曲、歌手が同じうえ、歌の舞台となっているのはともに「上海」です。そこから『夜霧のブルース』は『上海ブルース』の後日譚といっていいところがあります。
 そこでまずは(別記事で既に述べていますが)『上海ブルース』の背景などについて、少し見てみたいと思います。

 「涙ぐんでる上海の 夢の四馬路(スマロ)の街の灯 ……」
 『上海ブルース』は昭和14年に発表されました。歌の舞台は、1930年代のノスタルデック上海。欧米列強と日本の租界(そかい)都市、アジア随一の国際都市として、最後の輝きを放っていました。
 2年前の昭和12年(1937年)7月7日の盧溝橋事件を足がかりに、日本軍が本格的な大陸進出を開始しつつあった時代です。

 『上海ブルース』の主人公は日本にいる恋人と別れ、何か理由(わけ)あって上海にやってきたのです。だから「涙ぐんでる」のは上海の街の灯ではなく、主人公の方なのです。
 この歌が作られた頃は、大陸に大軍を進出させた高揚感もあいまってか、ロマンチック上海を甘美に謳い上げた叙情歌となっています。

 その後戦火は中国全土に拡大し、上海も日本軍の統治下に置かれることになります。「夢の四馬路」などの街区自体が破壊されることはなかったにせよ、アジア一の金融・経済都市の機能は大きく制限され、かつて魯迅(ろじん-ルーシュン)も住んでいた文学や映画産業などが盛んだった芸術都市としての側面も色あせていくことになりました。
 反面日本統治の間隙をぬって、阿片窟などで麻薬がはびこり、娼婦、流浪者、犯罪者、スパイなどが横行する魔都の姿がいよいよ露わになっていったのかもしれません。

 そして昭和20年(1945年)8月15日の日本の無条件降伏(敗戦)。今般の尖閣問題による反日デモの暴徒化による日本人暴行ではないけれど、その日以降日本人は上海の夜の巷など歩けたものなのかどうか。
 しかし『夜霧のブルース』の主人公は、戦後もなお上海にい続けた設定になっています。『上海ブルース』から『夜霧のブルース』まで、戦争を挟んで約8年。夢を抱いて上海にやってきた主人公は、激変の時局に翻弄され、気がついてみると上海の夜の街を彷徨(さまよ)う“はぐれ者”(エトランゼ)になっていた、ということなのでしょうか。

 なおこの歌の中の「四馬路」(スマロ、スマル)は、中央から四番目の、馬が行き交える大通りということで四番街というような意味です。主として欧米列強の租界だった街区ですから、「夢(憧れ)の四馬路」という表現になるわけです(現呼称は「福州路」)。
 対して「虹口」(ホンキュ)は、黄浦江を挟んで四馬路とは反対側で、日本租界のあった街区です。虹口と四馬路を結ぶのが、『上海ブルース』1番で歌われている「ガーデンブリッジ」です。

 黄浦江の河口付近は、“霧のロンドン”のテームズ河河口付近よろしく霧が出やすく、そこでこの歌のタイトル及び一番の歌詞となるわけです。夜霧にほの浮かぶ紅い灯影。歓楽街の連なりが目に浮かぶようです。

  誰も皆傷負いて行く夜霧街   (拙句)

 男声フォレスタコーラスではこれまで、榛葉樹人さん、横山慎吾さん、澤田薫さんというテノール陣が独唱することが多かったように思います。ところが『夜霧のブルース』では攻守ところを変えて、高音トリオはコーラスで支え、今井俊輔さん(バリトン)、大野隆さん(バス)、川村章仁さん(バリトン)という低音トリオが独唱を担当しています。
 この歌の雰囲気また元歌がディック・ミネであることを考えれば、妥当なのでしょう。(この歌のピアノ伴奏は吉野翠さん。)

 1番ソロは今井俊輔さん。歌もさることながら、最近の今井さん、今流行(はや)りの形にうっすらとヒゲをたくわえ、野性的な魅力を加えています。そういえば当ブログ検索フレーズに限って言えば、以前男声フォレスタナンバーワン人気は榛葉樹人さんでしたが、最近は今井さんが榛葉さんを凌ぐ勢いです。

 2番ソロは大野隆さん。大野さんの独唱初めて聴きました。大野さんに限りませんが、低音お三方の声量が豊かで驚きました。
 余計なことながら、大野さんに是非お聞きしたいことがあります。「大野さんにとって“可愛いあの娘”は誰ですか?」。やっぱり小笠原優子さんですか。(独り言)だとしたら「この果報者~ッ !」。

 3番ソロは川村章仁さん。川村さんのソロもあまり聴けないと思いますが、低音の魅力で男のダンディズムを歌い上げています。それにこの歌の川村さん、ワイルドで精悍な感じです。この歌の背景であるオールディズ上海の夜霧の中を、コートを着た川村さんが歩き去って行く…。絵になりそうです。

 (大場光太郎・記)

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