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フォレスタの「冬景色」

-『早春賦』『朧月夜』『夏は来ぬ』などと共に「日本的原風景」の名叙情歌-

   (「フォレスタ - 冬景色」のYouTube動画URL)
    http://www.youtube.com/watch?v=0abTHEWi_Jw
   

  冬景色   (作詞、作曲:不詳)

さ霧消ゆる湊江(みなとえ)の
舟に白し、朝の霜。
ただ水鳥の声はして
いまだ覚めず、岸の家。

烏(からす)啼(な)きて木に高く、
人は畑(はた)に麦を踏む。
げに小春日ののどけしや。
かへり咲(ざき)の花も見ゆ。

嵐吹きて雲は落ち、
時雨(しぐれ)降りて日は暮れぬ。
若(も)し灯火(ともしび)の漏れ来(こ)ずば、
それと分かじ、野辺(のべ)の里。

 「さ霧消ゆる湊江(みなとえ)の 舟に白し、朝の霜。」
 立ちこめていた霧のヴェールが上がるとともに見えてくる海辺の冬景色。何とも心にくい歌い出しではありませんか !
 以下に続く、野辺の里の昼と夕べの冬景色のさまも極めて視覚的、絵画的で、一つ一つの情景が目に浮かぶようです。

 この歌は大正2年(1913年)刊行の『尋常小学唱歌 第五学年用』が初出の文部省唱歌です。
 それからずっと遅れて、戦後昭和生まれの私も、ちょうど小学校5年生(昭和35年)の初冬頃に学校の音楽の授業で習いました。どなたもそうだったことでしょうが、東北の山国にはさすがに「さ霧消ゆる湊江」という景色はなかったものの、おおむね自分の郷里の冬景色そのままの歌と捉えていました。

 かくも格調高く美しい文語調のこの歌を、大正初期から私らの世代までの小学生たちは当たり前のように学校で教わったのです。もろちん国語の授業ではないのですから、この歌の難解な詩語の意味を一々読み解いてもらったわけではありません。
 しかし実はそんなことはどうでもいいのです。その時は分からずとも、少年期にこういう良い歌を習い覚える、ただそのことに意義があると思うのです。

 それによって知らず知らずのうちに「情操」が育まれ、心の奥深くに詞とメロディが沁み込んでいきます。沁み込んだ証拠として、半世紀を過ぎた今でもこの歌の歌詞をほぼそのまま口ずさめるのです。
 この歌は平成19年(2007年)、「日本の歌百選」に選ばれました。

 『冬景色』の舞台となったのは関東以南の地方のように思われます。この歌には北国の冬には付き物の「雪」が出てきませんから。
 「小春日」「かへり咲の花」「時雨」。これらはすべて初冬の風物詩(季語)です。「さ霧」(「狭霧」。「さ」は霧の美称を表わす接辞)も晩秋から初冬にかけて発生しやすい気象現象ですから、この歌は、晴れた初冬の穏やかな小春日和の一日を詠んだ歌と言っていいのでしょう。

 ただ「麦を踏む」だけは少し季節がズレているようです。俳句的には「麦踏(むぎふみ)」は春(早春)の季語ですから。「霜柱で根が浮き上がってしまうのを防ぐため、またいたずらに伸びては株張りが悪く収穫が少ないので、たくさん株を出させるために麦踏を行う。」(角川文庫版『俳句歳時記-春の部』より)
 この歌を、早春にほど近い「春隣(はるどなり)」の頃の歌としても、いっこうに差し支えありません。ただ私は全体的な雰囲気から、ちょうど今頃の「初冬の歌」としたいのです。

                          *

 この「日本的原風景」の名叙景歌を、フォレスタコーラスが歌ってくれています。男声4人と女声4人の混声コーラスです。

 1番独唱は矢野聡子さん。一人前面メーンに立っての、矢野さん独特のうんとキーの高い歌声です。後に続く男声コーラスが低い音程に聴こえてしまうほどです。
 「楝(おうち)散る川辺の宿の 門遠く水鶏(くいな)声して・・・」。
 『夏は来ぬ』4番の矢野聡子さんの歌声には、本当にジ~ンとさせられました。また『湖畔の宿』でも独唱し、そしてこの歌でも海辺の情景を熱唱していて。「水辺の歌なら矢野聡子」ということなのでしょうか?

 例えば「矢野聡子さんの復帰はいつですか?」。矢野さ~ん、皆さんお待ちかねですよーッ。早く戻ってきてくださ~い !

 2番は一転して、大野隆さん、川村章仁さん、榛葉樹人さん、横山慎吾さんによる男声コーラスです。先ほど述べたように、矢野さんの後で一オクターブ低く聴こえますが、これが普通なんでしょうね。
 2番後半からの、男声にかぶさる女声の斬新なスキャットあたりから、混声コーラスの醍醐味発揮という感じです。

 冬景色ということで雪をイメージしたのか、矢野聡子さん、中安千晶さん、吉田静さん、白石佐和子さん4女声の純白のドレス、とっても素敵です。いえ、この歌の混声コーラス、それ以上に素敵です !

 (大場光太郎・記)

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