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世界の中で止まっている日本

-日本が「動き出す」には硬直した官僚支配構造の打破が最も必要なのだが…-

 現在の我が国の建築家の中でもっとも著名でもっとも活躍しているのは、安藤忠雄(あんどう・ただお)氏ではないでしょうか。
 安藤忠雄氏は1941年大阪生まれの71歳。若い頃世界各国を旅した後、独学で建築を学び、69年に安藤建築研究所を設立したというい異色・異能の人です。97年東大教授に、2003年から同大名誉教授に就任しています。また10年には文化勲章を受賞しました。

 以前何かの本でだったか、安藤氏の言葉に感銘を受け、それを手帳に書き写しました。それはおおむね次のような内容でした。

 感動のない仕事は成功しない → 感動出来ない人間は成功しない
 ①本気で取り組めば、面白いことや感動することが必ず出てくる。
 ②仕事をしている時は、ワクワクしながら生きてみよ。

 同氏自らがそのような姿勢で仕事に取り組んでこられたのでしょう。なかなか説得力のある言葉です。
 凡人は分かっていても、常時「本気で仕事に取り組む」ことも、絶えず「ワクワクして生きる」ことも出来はしません。しかし成功哲学としてはまさにそのとおりなので、時折り読み返してはわが身の至らなさを反省している次第です。

 その安藤忠雄氏、『日刊ゲンダイ』(1月5日号12面)の「新春特別インタビュー」で、グローバルに活躍する同氏の視点から、日本の抱える今日的問題を語っています。普段国内にいる者にはなかなか気づけない指摘だと思われますので、以下に転載します。

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世界の中で止まっている日本  新春特別インタビュー 安藤忠雄

国家の復興には一人一人の「人間力」が問われている

 現在、私の仕事はその80%が欧米、アジア、中東など、海外のものです。そのため、外から見た日本の評価をよく耳にします。特に発展目覚しいアジアの国々、中国や韓国、台湾、インドなどから見たら、今の日本は止まっているように見えるようです。
 確かに日本は国家の決断が遅く、スピード感がありません。また、長らくリーダーを欠いた状態で、国家としての明確な目標も見えてこないことが、国民の不安をあおっています。

 戦後、日本の復興は「世界の奇跡」といわれたものです。日本人は忍耐力があり、勤勉でした。しかし、社会が経済的に豊かになった1980年代以降、国民は緊張感を失い、考えることを放棄するようになった。その弊害は、東日本大震災以後の社会の対応の中で、顕著に表われました。

 復興会議メンバーとして参加しましたが、「2030年にはせめて30%ある原子力発電を15%にする。そのためにまずは7.5%の省エネに努め、7.5%を自然エネルギーにシフトする。そして、2050年に向けて原発をゼロにする方針を発表すべきではないか」といったエネルギー問題の方策についても、また「住宅の高台移転」の問題についても、「そういった具体的な話をする会議ではない」とされ、踏み込んだ議論には発展しませんでした。

「何とかなるさ」では死んでしまう

 エネルギーの指針ひとつとっても、国が明確な方向性を示せない。その結果、しっかりとしたトップがいて、決断が速い企業は、次々と海外に拠点を移したのです。しかし、こうした企業はひと握りで、政府も、他の国内企業も決断が遅く比較的のんびりしている。国民も含めて「何とかなるさ」と思っているのでしょうが、この国はもはや瀕死の状態です。

 こうなったのは戦後日本の教育が、「責任ある強い個人」を育ててこなかったからです。よく言えば民主主義的、悪く言えば、「責任回避型の社会」の弊害です。

 今こそ、国民一人一人の意識の改革が必要です。資源もエネルギーもなかった日本の国が、かつて唯一誇っていた「人間力」、レベルの高い資質を呼び起こし、国家としての復興ののろしを上げなければなりません。年末の選挙で政権政党が交代しましたが、新しい政権が、どれだけの決断力を持ち、強いリーダーシップで国民を導いていくことができるのかー真価が問われるのはこれからだと思います。  (転載終わり)

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コメント

『地球上に夢を届ける』
尊敬する有名建築家には、実践哲学があるんですね。
他にも、フェラーリのモデルをデザインされた方(奥山清行氏)は、貴殿と同郷の山形出身で、彼も、生まれていたときからみていた山々のかたちから、わたくしの感性が育まれたとおっしゃっていました。
これらは、日本の地理的ハンデ(地球儀の縫い目のように、世界の大陸プレートがぶつかり合う)から、もたらされたあまりにも激しい気象変化や流れを絶やさない河川、そして草木の生態系の豊かさと関連づけられるのではないでしょうか?

いまの 日本人の勤勉さ、肌理細やかな心遣いは、製品や技術の高品質実証に表れていて、日本人が世界から尊敬される国民
として自信をもって良いんだと思います。
日本国民はもっともっと『地球上に夢を届ける』ことができると私は信じています。 --時遊人さんのブログに学ぶーー

投稿: hanasaka,j | 2013年1月12日 (土) 10時19分

 日本人の特質を生かした「優れた物作り」。これも我が国が世界に誇れ、かつ世界中から尊敬されてきた要素の一つでしたね。「でしたね」というのは、小泉・竹中コンビによる新自由主義、市場原理主義導入によって、それが根底から崩れつつあるように思われるからです。
 特に大企業ほど外資がどんどん入り込み、物作りの精神を忘れ「利益第一主義」とばかりに、内部留保に余念がありません。その結果、トヨタもパナソもソニーも国際競争力がどんどん低下していっています。むしろ名もない町工場が類を見ない画期的な新技術で世界から注目されるケースがあるようですね。
 前段はおっしゃるとおりだと思います。なお奥山清行氏については、既に記事にしていますのでよろしかったらご一読ください。

『奥山清行氏のこと』
http://be-here-now.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/post-04f8-1.html

投稿: 時遊人 | 2013年1月12日 (土) 15時20分

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