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フォレスタの「とうだいもり」

-学校では教えていないらしいが、いついつまでも世を照らす歌であって欲しい-

    (「フォレスタ とうだいもり」YouTube動画)
     http://www.youtube.com/watch?v=qyzTJelULEw


 良い歌が集中していたからなのか、小学校高学年で教わった歌は長く記憶に残る歌が多いようです。この『とうだいもり』もその中の一曲です。
 一応私が教わった年代も述べておいた方が方がいいと思います。小学校5年生、昭和35年のことでした。この歌の季節は「真冬」ですからその年の冬だったのでしょう。教わった当時から、何と気高い、心が清々しくなる歌だろうと思っていました。

 この歌が我が国の歌ではなく外国の歌であることは音楽の教科書を見ただけですぐに分かりました。楽譜の上に「勝承夫」とあったからです。以前の『唱歌「夜汽車」』でも触れましたが、勝承夫(かつ・よしお)という名前は外国の歌にけっこう登場し、すっかりおなじみだったのです。
 歌詞の感じから古くからの文部省唱歌かな、と思いきや。戦後間もなくの昭和22年(1947年)の小学校5年用音楽教科書が初出なのです。

 『フォレスタ - とうだいもり』冒頭に「イギリス民謡」と謳われています。最近まではそれが定説でしたが、2011年この定説が覆りました。一橋大学名誉教授の桜井雅人氏によって、それまで作者不明とされていた『仰げば尊し』の原曲は19世紀アメリカのある人が作曲したものと判明し、同時にこの歌もほぼ同時期のアメリカの歌だったことが分かったのです。
 賛美歌として作られたという説もあるようですが、こちらは確実ではありません。しかし当時の私もこの歌に何となく「気高さ」を感じたように、もしそうだったとしても不思議ではないと思います。

 アメリカのこの歌の原曲、日本では明治期から知られていました。『鉄道唱歌』『故郷の空』『青葉の笛』や明治期軍歌の作詞者として有名な大和田建樹(おおわだ・たけき)によって、明治22年、『旅泊』という歌詞が作られました。
 張継という人の漢詩(七言絶句)を下敷きにしたというこの歌詞もなかなか良い詞です。ただ当時は日本人による作詞・作曲が建前だったので、『旅泊』は尋常小学校唱歌としては採用されませんでした。今日ではこの歌詞を知る人は皆無に近いようです。

 この歌が広まったのは何と言っても、勝承夫(1902年~1981年8月3日)の『灯台守』によってです。アメリカの原曲の厳かな感じ、さらには以前の『旅泊』から連想されたのかも知れないこの歌詞。
 一唱気が引きしまり勇気が湧いてくるような名訳詞です。戦後間もなくの打ちひしがれた気分を一新させ、当時の国民に大きな希望を与えたであろうことは想像に難くありません。

 「灯台守」とくればすぐに思い浮かぶのが、名画『喜びも悲しみも幾年月』です。昭和32年(1957年)、木下恵介監督により松竹が制作・公開した作品でした。
 佐田啓二と高峰秀子という往年の名優が灯台守の夫婦を演じ、戦前から戦後25年間にも及ぶ灯台守の生涯を描いた感動作でした。その間、北は石狩灯台、中ほどの観音崎灯台(神奈川県三浦市)、伊豆大島灯台から南は女島灯台(長崎県五島列島)まで、何と全国11ヶ所もの灯台を転任しています。

 ずっと後年ビデオで二度ほど観ましたが、まさに「想えよ とうだい まもる人の」「とうときやさしき 愛の心」、涙なしでは観られませんでした。
 今ふと思いました。この歌には別にヒットした(男声フォレスタも歌っている)『喜びも悲しみも幾年月』という主題歌があります。が、しかし木下監督、そもそもは『灯台守』の歌に触発されてこの映画を構想したのではないでしょうか?

 だいぶ長くなりましたが、どうしても触れておかなければならないことがあります。
 こんな名曲を学校で教えなくなっているというのです。えっ、どうして?どうも国内の灯台が有人から無人灯台に切り替わったからのようです。完全自動化となったのは2006年(平成18年)12月5日、それ以降日本には灯台守はいなくなったといいます。

 少し荒っぽい言い方ですがー。
 文部科学省のおエライお役人さんよ、それがどうだって言うんだ。現実にはいなくなったのかもしれないけど、かつては絶海の孤島状態で、厳しい作業に身を粉にして船舶の航海の安全を守ってくれていた人たちがいたわけでしょう。その「尊き」姿を歌った歌をなぜ教えようとしないの?あなたがたとてこの歌を学校で教わったんでしょう。その時どう感じました?

                       *
 我がフォレスタはもちろんそんなことはなく、嬉しいことに、この『とうだいもり』しっかり歌ってくれています。
 前列の吉田静さん、中安千晶さん、白石佐和子さん、矢野聡子さん、4人の女声と、後ろの大野隆さんと横山慎吾さんの高低音男声2人、計6人による混声コーラスです。

 まず気がつくのは、この歌、いつものピアノ演奏がないことです。つまり最初から最後までアカペラなのです。それでいて何か違和感があるかというと、まったくそんなことはありません。「これぞフォレスタコーラス !」と言いたくなる見事なコーラスです。
 歌詞そのものの斉唱はもとより、イントロ及び中間のハモリまで、男声、女声、高音、低音がほどよくミックスされた、心地良い合唱です。さながら一人ひとりの声が楽器であるかのように、一つのハーモニーとなって響き渡っています。
 さすがは声楽のプロ集団、脱帽です。

 「コーラスは低音が命」とはよく言われることのようです。この歌はどちらかというと荘重な感じの歌ですから、余計そうなのでしょう。男声ではバスの大野隆さん、女声ではメッツォ・ソプラノの吉田静さんの低い声が実によく効いています。

 前列の女声の皆さん、気高い曲調の歌だからそう感じるのか、古歌にある「乙女の姿しばしとどめん」を彷彿とさせる、清らかな立ち姿です。

 (大場光太郎・記)

関連動画
『フォレスタ - 喜びも悲しみも幾年月』
http://www.youtube.com/watch?v=RrlzofGei0c
参考動画
『岡林信康の「とうだいもり」』(我らの世代の反骨の「フォークの神様」が、何ともやさしい声でこの歌を歌っています。アメリカンフォーク調のギターも聴きものです。原曲もこんな感じだったのかな?)
http://www.youtube.com/watch?v=Q3AnLUfS9ys
関連記事
『唱歌「夜汽車」』
http://be-here-now.cocolog-nifty.com/blog/2011/10/post-dad9.html

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