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製造業の衰退を物語る就労人口減少

-製造業「技術立国」は資源小国ニッポンの生命線。安倍政権で蘇えるのか?-

 『日刊ゲンダイ』(2月4日号3面)記事を後に転載します。

 同記事のタイトルからも分かるとおり、製造業で働く人が半世紀ぶりで1000万人を下回ったということです。

 我が国は、諸外国から原材料を安く輸入し、国内の優れた技術力で加工・製造した製品を高く輸出する。それこそが、資源小国の我が国が国際的に強い競争力を維持し得た原動力なのでした。
 その意味で製造業は、建設業と並んで、否それ以上に重要な我が国の基幹産業です。よってこの分野での就労人口減は、我が国の抱えるさまざまな問題について考えさせられます。

 バブル崩壊後の「失われた20年」で、製造業はすっかりおかしくなってきていました。そこにはさまざまな要因があることでしょう。ざっと思いつくだけでもー。

 ○韓国や中国など後進国に技術レベルでどんどん急追され、追い越されている。
 ○製造業大手が、グローバル時代の価格競争を勝ち抜くため、中国など人件費の安い国に工場を移転させている。そのため国内製造業の空洞化が進んでいる。
 ○製造業大手は上の理由から、ガッポリ内部留保をため込み、一方では容赦ない社員のリストラを行ってきた。ベクトルが、技術革新や人材育成や設備投資などあるべき方向に向かわなかった。
 ○小泉政権下の米国追従政策の一環として、労働者派遣法が改正(改悪)され、製造業における派遣労働者の就労が可能となった。これによって、正規社員と非正規社員との給与・待遇の甚だしい格差が生じた。

 それでなくても、以前から製造業の現場は「3K」(キツイ、キタナイ、キケン)とみなされ、ホワイトカラー志向の若年就業者からは敬遠される傾向にありました。それに加えて上掲のような要因によって、製造業は一段と魅力を失い、今回の1000万人を切るという事態に至ったわけです。

 思えば、第一次産業である農業・漁業は土や海洋(自然)と密着していました。昭和30年代半ば以降の高度経済成長によって、我が国は有史以来のその基盤から決別し、第二次産業である製造業へと向かいました。それでも製造業は、「ものづくり」を通して現実生活とかなりの部分密着していました。
 それが今日では、欧米流の先進国気取りの我が国は、サービス業やIТ産業などの第三次産業へと移行中です。

 いささか皮肉を込めて言えば、私たちが目指してきた「豊かな社会」とは、自然と決別し現実からも遊離した、根無し草のように儚いものなのです。土を耕すことを忘れ、物作りを厭(いと)う社会に、より良き未来があるのでしょうか。
 文中に出てくる「三丁目の夕日」の昭和30年代前半の社会を知っている者にとって、「思えば遠くへ来たもんだ」という感を深くするのです。  (大場光太郎・記)

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半世紀ぶりに1000万人割れ
安倍政権「製造業の復活で経済成長」の大ウソ


 製造業で働く人が昨年12月に1000万人を下回った。ピークは1992年10月の1603万人。20年間で600万人以上の雇用が消失したことになる。安倍政権は「強い製造業の復活」を成長戦略の柱にしているが、ハードルは高い。

 製造業の1000万人割れは1961年6月以来、なんと「三丁目の夕日」の時代に逆戻りである。
 東海東京証券チーフエコノミストの斎藤満氏が言う。
 「日本の製造業は目に見えない敵と戦っています。タイやミャンマー、インドなど、生産コストがとてつもなく安い国々が競争相手。社員数を減らし、給与も抑制しなければ、対抗できません。生産拠点もどんどん海外に出ている。就業者数が大台を割り込むのは当然の流れだし、昨年は現金給与総額もバブル後最低を更新しています。大台回復は見込めません」

 経営者も「大きな流れは変わらない」(神戸製鋼所・藤原副社長)、「国内の新たな製造工場などで雇用を増やす方向には戻らない」(JVCケンウッド・江口社長)と言っている。国内の製造業はメタメタだ。

数十億円の予算で何がやれるのか

 そこで安倍政権は、製造業を復活させ、経済を成長させるシナリオを描いている。日本の高度成長は、ものづくりが牽引した。自動車や家電は世界で信頼を獲得し、メード・イン・ジャパンは市場を独占。国内で作った製品を海外で売ることで社員の給与は増え、個人消費が盛り上がり、景気も拡大していった。あの頃の夢よもう一度、というわけである。
 そんなうまい話があれば結構なこと。ぜひ、推し進めてもらいたいが、来年度予算案を見ても、道筋は見えてこない。

 「製造業復活に必要なのは、コストの安い新興国を2周遅れにするぐらいの圧倒的な技術力です。それには、日の目を見ていない有望な技術に予算をつけ、ものになるまで支えることが重要。例えば、iPS細胞などの再生医療関連に10億円を計上していますが、すでに広く知れ渡った技術です。それよりも、隠されている分野に光を当てる政策を進めるべき。エネルギー関連など、丹念に見ていけば、眠っている技術はたくさんあるのです」(斎藤満氏 = 前出)

 モノになることが分かっている技術には、放っておいても民間企業が飛びつく。わざわざ税金を投じて育てるまでもない。国がやるべきは、それより前の段階の幅広い支援というわけだ。

 省エネ効果の大きい半導体の開発や新しいプラスチックの開発など、ほかにも予算はついているが、いずれも数十億円程度。「10年で200兆円」という国土強靭化に比べるとスズメの涙だ。本気で製造業の復活を考えているのか疑わしいレベル。これでは、ものづくりの担い手も減る一方である。
 結局、安倍がやろうとしているのは公共事業のバラマキだ。土建業界だけが潤う旧来の自民党政治である。  (転載終わり)

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