島田祐子「春の日の花と輝く」
-こういう歌あればこそ、人類の霊性は向上して来られたのではあるまいか-
(『k17 4月春の日の花と輝く 島田祐子』YouTube動画)
http://www.youtube.com/watch?v=umXoQIl70xM
ゴールデンウィークに向けて今が春の真っ盛りです。うららかに日は照り、木々の新緑がまぶしいほどです。分けても花々の何と豊かなこと。チューリップ、パンジー、マーガレット、クレマチス、藤の花、皐月。珍しいところでは鈴蘭、芍薬、ラナンキュロス・・・。方々で色とりどりの花が咲き誇っています。
一年中で花が最も豊かなこの麗しい季節。ある日ふと、その名もズバリ『春の日の花と輝く』が聴きたくなりました。
そこで2週間ほど前この歌のYouTube動画を当たり、2、3聴いてみました。その結果しびれるほど素晴らしかったのが、今回ご紹介する『島田祐子「春の日の花と輝く」』です。
まずは『春の日の花と輝く』の歌そのものについて述べてみたいと思います。
この歌は古くからのアイルランド民謡だったようです。それに18世紀のアイルランドの詩人トーマス・ムーアが詩をつけたのが今日世界的に歌われている『春の日の花と輝く』です(原題「Belive Me,if All Those Endearing Young Chams」)。
アイルランドの首都ダブリンの裕福な商家に生まれたトーマス・ムーア(1779年~1852年)は、長じてロンドンで法律学を学び、後にバミューダ統治の責任者にもなりました。
詩人としてのムーアは、この歌のほかにも日本でも愛唱されている『庭の千草』をはじめ後世に残るアイルランド民謡を次々に書いて文名を高め、バイロンやシェリーといった西洋文学史上の詩人らとも交友を深めました。
トーマス・ムーアの原詩を邦訳したのが、堀内敬三(ほりうち・けいぞう)です。
堀内敬三(1897年~1983年)は、私など“昭和30年代少年”にとっては音楽の教科書でよく目にした懐かしい名前です。小学校高学年時なら『灯台守』や『夜汽車』の勝承夫(かつ・よしお)、そして中学校時は堀内敬三。
堀内敬三の訳詞は非の打ちどころのない格調高い名訳詞です。上田敏(うえだ・びん)の『山のあなた』(カール・ブッセ)や『落葉』(ヴェルレーヌ)は原詩を超えた名訳業との誉れがありますが、この歌の堀口訳詞もあるいはそうなのかもしれません。
本当はその訳詞も掲げたいところです。がしかし、翻訳著作権存続期間内であるためそれはできません。
この動画は美しい花々の図柄をバックに、1番、2番の堀内訳詞が表示されています。この歌を視聴される方は是非、訳詞もじっくり味わっていただきたいと思います。
と言うことで、島田祐子さんの『春の日の花と輝く』についてです。
この歌をこれだけ美しく声量豊かに歌われてしまうと、「いやあ、素晴らしい !」の一言です。歌うべき人が歌ってこそ、その歌の良さが倍加されるというもの。誰が歌ったとしてもこれ以上完璧に歌えるはずはなく、ただただ脱帽です。
島田祐子さんは20年以上前テレビで歌っている姿をよく見ました。やはり流行女性演歌歌手とは違った印象があり、当時の国民的歌手といった風格がありました。その後その地位は鮫島有美子さんあたりが引き継いだのかもしれませんが、現在ポスト鮫島としての国民的歌手が見当たらないようで残念です。
なお島田祐子さんの名唱として、もう一つ『花かげ』を挙げておきたいと思います。
この歌は、今まさに「春の日の花と輝く」麗しのフィアンセへの賛歌から始まります。これだけで十分聴く者の心を惹きつけます。が、この歌の真骨頂はそれに続くフレーズにこそあるように思われるのです。
「・・・たとえ世の冬が来て、君が容色衰えるとも、我が愛は永久(とわ)に変らじ」
(いささか皮肉を込めて言えば)仮面夫婦、熟年離婚、定年離婚などというイヤな“現代基礎用語”が飛び交う現ニッポンの愛の形と何と違うのでしょう。
この歌全体にスピリチュアルな気高さが感じられます。「こんなの理想論だよ」と笑うなかれ。こういう「永遠の愛」を謳い上げた歌や詩あればこそ、人類は一歩一歩霊性の向上進化を続けて来られたのではないでしょうか。
その意味で『春の日の花と輝く』は「不朽の愛の賛歌」と言うべき名曲です。
(大場光太郎・記)
関連動画
『花かげ - 島田祐子』
http://www.youtube.com/watch?v=E60x2zpK1rU
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