八木重吉記念館(1)
蟲(むし)
八木重吉
蟲が鳴いてる
いま ないておかなければ
もう駄目だというふうに鳴いてる
しぜんと
涙がさそわれる
2年前のちょうど今頃諸般の事情で車を手離してからというもの、どこへ行くにも徒歩、バス、電車の組み合わせです。不便と言えば不便です。しかしこの「ユックリズム」が、時として意外な発見につながることがあります。
今回はそんな一例を述べていきたいと思います。
月が変わった今月1日、相模原市緑区内の某社を訪ねました。先月新しく顧客になっていただいた会社で、その日は2回目の訪問でした。JR相模線の厚木駅から(途中橋本駅乗換え)JR横浜線の相原駅で降りて、同駅近くからバスに乗り20分ほどかけて行くのです。
残念ながら、ゴールデンウィークだからせめて国内の遠くへ旅行を、などという余裕などない私にとってそれは「ささやかな旅行」のようなものでした。
同社には午後3時半前に着きました。主に応対してくれたのは、ここで新しく社長に就任することになったまだ30歳前の新社長です。気性のさっぱりした好青年です。同社は建設業関係の会社で創業はけっこう古いようです。
若い新感覚的経営で会社を盛り立て、さらには地域の次世代リーダーとして大成していっていただきたいものです。
さて打ち合わせも終盤となった4時過ぎ、同社事務所の窓越しに1台のバスが停まっているのが見えました。実は同社の隣がバス路線の終着となる折返し場なのです。
(終わるまで待っていてくれないかなぁ)
と言うのも、この路線は1時間に一本のバス往復しかないからです。
しかし非情にも、少しするとバスは行ってしまったらしく、次にその方向を見たときには影も形もありませんでした。
打ち合わせが終了して同社を辞したのが4時半頃でした。くだんの折返し場でバス時刻を確認するに、何と40分くらい待たなければならないのです。
この日は曇り空で5月だというのに少し寒いくらいの陽気です。それにこの辺りは両側から小山の連なりが迫る山間(やまあい)の地区で、畑や田んぼの合間に家がポツリポツリと点在するような具合です。
いろんなことから、40分もジッと待ってられるような条件ではないのです。
そこで私は、往きはバスで来た道を、行けるところまで歩いてみることにしました。
こうして山間の道を歩き始めました。駿馬(しゅんめ)ならぬ駄馬の私なのに、ズシリと重い斤量(きんりょう)となるバックを手に持ちながら(苦笑)。
重いはずです。中には700ページもあろうかという『思考は現実化する』や、400ページ弱の『お金と引き寄せの法則』と文庫本、それに業務関係の厚い書類をはさんだビニールファイル3冊などがあるのでから。
しかしこの時は打ち合わせが順調に運んだこともあってか、バックの重さもさほど気にならずに少し早足で歩けました。
余裕で周りの景色に目をやると、道の右手20メートルくらいは畑で、その向こうは小川です。その先は小山で木々に豊かな新緑が繁っています。
中でも目を引いたのは、山際に繁っている木のところどころにうす紫色の花のようなものが垂れているさまです。
(んっ?)
と思って目を凝らして見るに、それは藤の花なのです。それがあっちこっちの木々の天辺や途中から垂れて、今を盛りに咲いているのです。
町場の家の庭先や公園の藤棚でならいくらでも見られるけれど。まさかあんな具合に大きな藤の木として山に自生していようとは。
歩きながら思ったことにはー。そう言えば、山藤章二という(某週刊誌に有名人たちのユニークな似顔絵を連載している)漫画家がいるけれど、名前だけかと思っていたら「山藤」は本当にあったわけだ。
さらに思い出しました。数年前一緒に合併して相模原市緑区となった旧・藤野町はすぐ近くですが、やはりこんな風に藤の木が山に多いことから名づけられた町名だったのだろうか?
いずれにしても思いもよらぬ発見でした。
バス停を1つ2つ越して歩くと少しずつ両側の山が遠くに退き、人家もある程度まとまり集落らしくなっていきます。
15分ほど歩き3つ目のバス停を過ぎた辺りに、左折すると法政大学へ行く道にやってきます。もちろんここが同大学本部ではなく「多摩キャンパス」です。この辺は行政区域が入り組んでいて、ここは東京都町田市相原町となるようです。
バスは同大学キャンパス内を一巡します。ただこの路線の利用客はほとんど地元の人たちで、法政大学生専用バスは相原駅近くのバス発着場から別に出ています。
私は2度バスに乗って同大学キャンパス内を一瞥したわけですが、山の中に入って行く感じなのです。造成はキャンパス各施設周辺の最小限にとどめ、周囲の小山など自然はそのまま残す配慮をしているようです。だから折りしも新緑の季節、豊かな緑の木立に覆われた中に各キャンパス施設があるような感じです。
シティボーイ、シティガールぶった「ちゃらい」学生は別として、自然の何たるかが分かる、もしくは分かろうと努める学生にとっては、最高のキャンパス環境であることでしょう。 (以下次回に続く)
(大場光太郎・記)
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