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フォレスタの「鈴懸の径」

    (「フォレスタ 鈴懸の径」YouTube動画)
     http://www.youtube.com/watch?v=AboT01l5kxc


 『鈴懸の径』は1942年(昭和17年)9月にビクターレコードから発表された歌謡曲です。同じ年に発表された(フォレスタの)『若葉』&『野菊』で述べたことの繰り返しになりますがー。

 発表された昭和17年は太平洋戦争の真っ只中、しかもこの年はミッドウェー、ガダルカナルなど戦争全体の帰趨を決する(我が国の敗北が決定的になった)大きな決戦が行われた年でもありました。
 にも関わらず(ということになるわけですが)、この歌は驚くほど澄明で、戦時色が微塵も感じられないのです。さりとて「なるようになるさ」式の捨て鉢な諦めの歌でももちろんありません。

 軍歌一色の当時にあっては、たとえば淡谷のり子の『別れのブルース』を戦地慰問では歌わないよう当局から言われたり(しかし淡谷は、「ならば慰問に行きません」と突っぱねた)、『上海ブルース』などのヒット曲のあったディック・ミネが「敵性音楽を歌うヤツ」と睨まれ活動の地を上海に移さざるを得なかった、というような難しい国内音楽事情がありました。

 佐伯孝夫の歌詞はともかく。灰田有紀彦(灰田晴彦)のメロディは斬新で、戦後のヒット曲かと見まごうほどハイカラで、一つ間違えば敵性音楽として発売中止になってもおかしくなかったように思われます。
 その意味で、戦争の真っ只中をスルーできた『鈴懸の径』は、幾重にも「奇跡の歌」と言ってよさそうです。

 この歌がハイカラなのは当然です。作曲の灰田有紀彦とこの歌を歌った弟の灰田勝彦は、元々ハワイ出身の日系二世で、兄の有紀彦は1928年(昭和3年)にハワイアンバンドを結成し、弟の勝彦はそこのボーカルとして活躍していたからです。
 言われてみれば、『鈴懸の径』のメロディはハワイアンがベースにあるような気もしてきます。

 敵性音楽を免れる上で大きかったのは、やはり佐伯孝夫という名作詞家のネームバリューと歌詞そのものだったのかもしれません。
 佐伯は戦争前既に、『無情の夢』や『燦めく星座』などのヒット曲を作詞していましたし、この歌のテーマは「学舎(まなびや)」なのですから。検閲のためこの歌を視聴した当局の人間も、懐かしさのあまり目頭が熱くなったとしても不思議ではありません。

 「友と語らん 鈴懸の径 通いなれたる 学舎の街」
 この歌のモデルとなったのは、歌唱した灰田勝彦の母校である立教大学構内にある「鈴懸の径」であるようです。


                 現在の立教大学キャンパス内の「鈴懸の径」

 この歌は発表と同時にヒットし、今日まで歌い継がれています。特定の大学・学校というに限らず、広く誰の心にも普遍化し得る「学舎の歌」であるからではないでしょうか。
 その意味では、『学生時代』(歌;ペギー葉山)『高校三年生』(歌;舟木一夫)『美しき十代』(歌;三田明)など、後の学園ソングの元祖と言ってもよさそうです。

   鈴懸にポプラ並木に秋の風
   吹くが悲しと
   日記(にき)に残れり   (石川 啄木『一握の砂』より)

 ところで「鈴懸」とはプラタナスのことです。おそらく西洋近代化に真似た明治以降、主に洋化方式の街並みの街路樹として導入されたのでしょう。和学名を「スズカケノキ科スズカケノキ属」と言うように、当初から「スズカケ(鈴懸)」と呼ばれていたものと推察されます。
 プラタナスの大ぶりな葉は、(神社拝殿前に垂れ下がった太い綱を揺すって鳴らす)大きな鈴の親玉の形(の鈴なり)に見えなくもありません。私が勝手に想像するに、「鈴懸」という和名はそういう連想から名づけられたのではないかと思われます。(注 これにつきましては屋形船さんコメント参照のこと。)

 「やさしの小鈴 葉かげに鳴れば」
 このフレーズは、鈴懸という名からイメージしたのではないでしょうか?ここのフレーズの詞曲は、涼しげな風鈴の音(ね)のように心地良い感じがします。その音色に誘(いざな)われて、いつしか懐かしい学舎の追想に浸りきる・・・。

                       *
 『フォレスタの「鈴懸の径」』。最近この歌の男声バージョンが出たかと思います。元歌が灰田勝彦だったように、男声フォレスタ版も必聴かもしれませんが、今回は元祖である女声バージョンを採用しました。

 歌うは、小笠原優子さん、白石佐和子さん、矢野聡子さん、中安千晶さんの4人の初代女声フォレスタです。
 出だしの「アーアーアー」のハーモニーからしてそうですが、音大卒コーラスグループらしく、随所にアレンジを凝らした聴き応え十分の歌唱だと思います。

 おそらく他のフォレスタ曲すべてに当てはまるのでしょうが、通り一遍で聴いたのでは聴き逃してしまう「プロの技」が、至るところに盛り込まれての一曲コーラス完成なのでしょう。
 聴く側もより耳を肥やし、また声楽理論のイロハくらいは心得ておくべきなのかもしれませんが・・・。

 この歌の皆さんの衣裳(ドレス?)、ゴールド基調の滅多に見られない衣裳です。何となく女子大生の制服のようにも見えますから、この歌専用として特注で誂えたものなのでしょうか?

 4女声の、涼風が吹き渡るような爽やかなコーラスから思いました。小笠原さんは東京音楽大学、白石さん・矢野さんは武蔵野音楽大学、中安千晶さんは国立音楽大学のご出身です。
 そこで、皆さんの「学校の街」はいかがだったでしょうか?どんな思い出がおありでしょうか?
 おひとりおひとりから、取って置きのお話をうかがいたいものですね。

 ピアノ演奏は南雲彩さんです。横顔しか映っていませんが、この時の南雲お姉さん(今現在3人の後輩ピアニスト加入しているので)、何とも「お若い」ですね。続いて鍵盤上の指の動きに移るわけですが、この長い指の動きを見ただけで、姿は映らなくても『南雲さんだ』と分かります。
 他の記事でも触れましたが、これぞ「恵まれたピアニストの手」、しなやかで芸術的な指の動きです。

【追記】 本曲とは関係ありませんがー。最近公開の『ラ・ノビア』、冒頭から2ゃんねるの「フォレスタスレ」を絡めてしまい、後になって『余計なことだった』と反省しました。そこでその部分を削除の上、なお一部修正を加えて短めの改訂『フォレスタの「ラ・ノビア』と致しました。
 深くお詫び申し上げ、訂正のご報告とさせていただきます。

 (大場光太郎・記)

関連動画
『フォレスタ 別れのブルース』
http://www.youtube.com/watch?v=5J0WpJpMN70
関連記事
『フォレスタの「若葉」』
http://be-here-now.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-c878.html
『フォレスタの「野菊」』
http://be-here-now.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-cc0f.html
『フォレスタの「ラ・ノビア」』
http://be-here-now.cocolog-nifty.com/blog/2013/07/post-e40b.html

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コメント

「スズカケのおおぶりな葉は、鈴に見えなくも無い」そんな無茶な・・。鈴のような実(球状花序)がなります。まさに鈴のような、そこからの命名でしょうね。

投稿: 屋形船 | 2013年8月21日 (水) 00時12分

 貴重なご指摘ありがとうございます。

投稿: 時遊人 | 2013年8月21日 (水) 01時47分

「鈴懸の径」で検索中に貴ブログに到達いたしました。参考にさせていただきました。『弟の晴彦はそこのボーカルとして活躍』は「勝彦」の間違いでしょうか。有紀彦=晴彦ですので。当方の勘違いであればすいません。

投稿: 鴨志田哲三 | 2017年3月 8日 (水) 23時11分

鴨志田哲三様

 貴重なコメント大変ありがとうございます。

 ご指摘の件、調べましたら私の間違いでした。早速訂正させていただきます。

 なお貴コメントの発見が遅れ、返信が遅くなりましたこと、お詫び申し上げます。

投稿: 時遊人 | 2017年3月10日 (金) 19時19分

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