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フォレスタの「谷間のともしび」

     (「フォレスタ 谷間のともしび HD」YouTube動画)
      http://www.youtube.com/watch?v=JyiP8OZmmBw


   黄昏に我が家の灯 窓にうつりしとき
   わが子帰る日祈る 老いし母の姿
   谷間灯ともしごろ いつも夢にみるは
   あの日あの窓こいし ふるさとの我が家
   谷間灯ともしごろ いつも夢にみるは
   なつかしき母のまつ ふるさとの我が家
   (繰り返す)
          (アメリカ民謡『谷間のともしび』
                日本語詞:西原武三)


 ロシア民謡に『ともしび』あれば、アメリカ民謡に『谷間のともしび』あり。ついそんな対比をしてみたくなる、いずれ劣らぬ米ロの「ともしびの名曲」です。そしてフォレスタとして『ともしび』を歌っているのは男声に対して、『谷間のともしび』の方は女声と、こちらの対比も興味深く、直前『ともしび』を取り上げたからには『谷間のともしび』もそうせずばなるまいと、今回取り上げることにした次第です。

                        *
 『谷間のともしび』(原題は「When It‘s Lamp Lightin‘ In the Valley」-「谷間灯ともし頃」)。ジョー・ライオンズ、サム・ハートと無名のコーラスグループ「ザ・ヴァガボンズ」の合作とされていますが、米国開拓時代のアパラチア地方か中西部で歌われていた元歌があるという記述もあるようです。いずれにせよこの歌には、その時代の古き良きトラディッショナル・フォークソングの曲調がべースにあるように思われます。

 この歌は現在でも、カントリー・ミュージックやブルーグラス・ナンバーとしてよく演奏されています。因みにブルーグラスとは、ケンタッキー州を中心とした山岳地帯の民謡から1940年代に派生したカントリー・ミュージックで、バンジョー、マンドリン、ギター、バイオリンなどの楽器で演奏されます。

 日本では西原武三によって訳詞されました。そして昭和9年(1934)、東海林太郎(ポリドール)の歌で大ヒットし、巷のダンスホールでもよく演奏され一世を風靡しました。御存知のように東海林太郎は、よく透るテノールを直立不動の姿勢で折り目正しく歌う我国歌謡界の草分けであり、昭和初期の大スターでした。

 以下の一文は、2008年4月17日「二木紘三のうた物語」の『谷間のともしび』の私のコメントを転載したものです。『谷間のともしび』そのものとは直接関係ありませんが、私自身が半世紀近く前目にしたささやかな「ともしび体験」を綴ったものです。

                        *
 アメリカの歌なのに、我が国の昔からの歌のような懐かしさがあります。郷愁めいた遠く過ぎ去った日々のことを、やさしく思い出させてくれます。『谷間のともしび』。中学三年の時に習いました。そしてこの歌に結びつく思い出も、その頃のことです。

 当時私は、山形の田舎町(東置賜郡宮内町・現南陽市宮内)に住んでいました。家が貧しかったものですから、「お母さんの生計を助けなさい」という担任の先生のご助言で、学校が終わってから夜の九時頃まで(中学一年から)アルバイトをしていました。
 その頃は、町なかの酒屋さんのアルバイトでした。店番、店内の掃除や商品の並べ替え、配達…。

 仲秋のある夕方、ビールか何かの配達で荷物を自転車の後ろに乗っけて、町外れのあるお宅に伺いました。私の知っている、二、三歳年上の先輩の家でした。
 「お晩でーす」。「はーい」。玄関の両開きのガラス戸の片側をがらがらと開けて、中に二、三歩入らせてもらいました。

 すると私が立っているやや広い土間より、一段高くなったすぐの間(ま)で、くだんの先輩と、やや年老いた感じのその母親と思しき人が、ちょうど夕食をとっているところでした。先輩は私を見て、『やあ』というように少し頭を動かし、またすぐ食事の態勢に戻りました。

 ちゃぶ台をはさんで、互いに向かい合った黙々とした夕餉。ちょうど真上あたりに、丸くてうす汚れたカサをかぶった裸電球が、二人をほの暗く照らしていました。
 私はそれを見て、『あヽいいなあ』と思いました。半分はほほえましいなあというのと、もう半分はうらやましいなあというのが、入り混じった想いの…。

 (その後どのように商品を置き、勘定をもらったのか…。まるで覚えていないのに。)
 たったそれだけの光景を、今でもたまに思い出すことがあります。
 昭和30年代のつましいともしび。その下(もと)での、親子二人のつましい夕餉の光景を。

                        *
 『フォレスタの「谷間のともしび」』 上沼純子さん、白石佐和子さん、吉田静さんの3女声によるコーラスです。

 女声コーラスなのでこの歌の叙情性を全面に出し、しんみりしたコーラスになるのかな、と思いきや。出だしの白石さんの独唱からして音吐朗々、「老いし母の待つ、懐しい谷間の我が家」への帰心はち切れんばかりの熱っぽいコーラスを聴かせていただきました。

 これはこれでもちろんオーケー、素晴しいコーラスなのです。
 ただ(長くもなり、私自身英語はからきしダメなので省略しましたが)、原詞を2番、3番とたどっていくとこの歌の意外な真実が見えてきます。すなわち元々のこの歌は罪を犯して逃亡中の男が、故郷の懐しい谷間の我が家の母を偲ぶ切実な内容となっているのです。

  少し余談気味になりますがー。
  その昔の米国西部開拓時代は、刑罰や死刑また冤罪も星の数ほど多かったようです。実際、西部劇映画にまま見られるように、ビリー・ザ・キッドを代表として、無法者、ならず者、お訪ね者、殺し屋が少なからずいたわけです。

  だからその頃アメリカの歌には「囚人モノ」というジャンルがあったといいます。ただ日本では馴染みがないためと、この歌は中学唱歌として教える目的上「教育上良くない」ということでそのまま訳さず歌詞を変えてしまったという経緯があったようです。西原武三の訳業自体はもちろん名訳詞なのですが・・・。

  どうせだから余談の余談をー。
  『思い出のグリーングラス』は、我が国でも昭和40年代半ば過ぎ森山良子が歌い、明るい系フォークソングとして当時の若者に大受けしました。私もその一人で下手なフォークギターでよく歌っていましたが、数年前知ったことには、この歌も実は「囚人モノ」なのです。そして『谷間のともしび』より遙かに深刻で、もう間なく死刑が執行される囚人がしみじみ故郷を回顧している、という衝撃的な内容だったのです。

  吉田さん、白石さん、上沼さんの同じ3女声で、私などがかねてからリクエストしていた『星の流れに』と『東京ブルース』を最近歌っていただきました。それは大変有難かったのですが、「吉田静さんソロ」は叶えられず、その腹いせに少し辛竦なコメントになったかもしれません(ウソです、ウソです、本当です-笑)

  冗談はともかく。今後この『谷間のともしび』を女声フォレスタが再度歌う機会がありましたら、以上のことも頭の片隅に置いて歌っていただければ、と思います。

 (大場光太郎・記)

関連動画
東海林太郎『谷間のともしび』
http://www.youtube.com/watch?v=HQ7v1vuguSY
『フォレスタ  思い出のグリーングラス』
http://www.youtube.com/watch?v=Bb7upGCqLYI
『フォレスタ  星の流れに HD』
http://www.youtube.com/watch?v=K4sY_X0IVxQ
『フォレスタ  東京ブルース HD』
http://www.youtube.com/watch?v=id-M3e3j_tI
関連記事
『フォレスタの「ともしび」』
http://be-here-now.cocolog-nifty.com/blog/2013/11/post-984b.html
『「ビリー・ザ・キッド」恩赦ならず』
http://be-here-now.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/post-af15.html

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