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フォレスタの「まほろば」

-このコーラス曲は、3・11で深く傷ついた日本再生の祈りの歌のようだ-
  
    (「フォレスタ まほろば」YouTube動画)
     http://www.youtube.com/watch?v=fNGJbDrdSB0
 
 
 今回は、数多(あまた)あるフォレスタコーラス曲の中でもユニークな曲を取り上げます。「ユニーク」というのは、この『まほろば』は、フォレスタのスタンダードスタイルである「懐しのメロディ」のリバイバルではなく、フォレスタコーラスのオリジナル曲であるからです。

 しかもお聴きになればお分りのとおり、詞曲(作詞:一条貫之、作曲:杉本龍之)ともに優れ、なおかつコーラスとして完成度の高いフォレスタコーラスとなっています。私個人としては、『汽車・三部作』や『流浪の民』などと並んで、混声フォレスタの代表的一曲ではないか、と思っています。

 既にご存知かと思いますが、『まほろば』は、『フォレスタ通信』サイトを開けると少しして流れてきます。また冒頭掲げましたように「k naitou」さん提供によるYouTube動画でも視聴できます。
 いずれも歌声(+別画像)だけなので、実際にこの歌を歌っているフォレスタメンバーの姿が見られないのが残念です。ただこのように歌声だけの場合、「コーラスそのもの」を純粋に味わえる良さがありますね。

                       *
 ここからは、歌のタイトルとなっている「まほろば」のことなど一。

 「まほろば」とは、「素晴しい場所」「住みやすい場所」という意味の我が国の古語です。漢字を用いて表記すると、確か「真秀呂場」だったでしょうか?(注 但し古事記原文では「麻本呂婆」であり、また日本書紀、万葉集式には「まほらば」となり「麻保良婆」か?)

 一言で言えば「理想郷」ということなのでしょう。そうなると、古代中国の「桃源郷」、西洋の「ユートピア」や「エル・ドラド」などにも相通じる言葉であるように思われます。

 「まほろば」が用いられている代表用例は次の和歌です。

 倭(やまと)は 国のまほろば たたなづく 青垣 山隠(こも)れる 倭しうるはし (『古事記中巻・景行天皇』より)

 古事記神話中の英雄である倭建命(ヤマトタケルノミコト)は、苦難を極めた東征を終えて大和に帰還の途次、病を得ます。病いよいよ重篤となり、今の三重県鈐鹿郡の能煩野(のぼの)というミコト終焉の地で詠んだ、辞世の和歌の一首とされています。なお、三重という地名は、ミコトの「我が足は三重の勾(まがり)の如くして甚(いと)疲れたり」に由来します。

 なぜか父の景行天皇に疎まれ、16歳にして九州の熊襲(くまそ)討伐を命じられこれを討ち果たし、続いて出雲を平定し、「国のまほろば」で寛ぐ間もなく、さらに東征に赴くことに。
「父は私に死ねとおっしゃるのか」 途中立ち寄った伊勢神宮でミコトは、斎宮で姉の倭姫命(ヤマトヒメノミコト)に涙ながらに訴えます。

 倭姫は天照大神の御杖代(みつえしろ)として、長年かけて「フトマニの法則」に則り20数ヶ所も大神をお遷しし、「美し処の良き処」との神言(みこと)を賜り、漸くこの伊勢の地にご鎮座いただくことにした人なのでした。伊勢神宮の開祖とも言うべき倭姫は、弟ヤマトタケルを不憫に思い、「危急の際はこれを使いなさい」と袋と一振りの宝剣を授けます。

 これが、相模の小野(今の静岡県焼津市)の草原で、敵軍から火攻めにされた時の助けになりました。袋の中の火打ち石と宝剣によって敵軍に火を返し、危うく難を逃れることができたのです。この時の剣は実は、その昔須佐之男命の八岐大蛇(ヤマタノオロチ)退治のみぎり、オロチの腹中から取り出した天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)という神剣なのでした。ヤマトタケルがこの剣で草を薙いだことから、以後「草薙剣」(くさなぎのつるぎ)と呼ばれることになりました。

 走水の海(今の神奈川県横須賀市)を航海中大荒れで船が転覆しそうになり、海神の怒りを鎮めるため愛妃・弟橘媛(オトタチバナヒメ)が人身御供として入水する、という痛ましい出来事もありました。
 そして倭建命自身も、「国のまほろば」である大和への帰還を果たすことなく薨(みまか)り、その身は八尋白智鳥(やひろしろちどり)という大白鳥と化(な)って、天に上っていったのでした。

 悲劇の皇子(みこ)倭建命の、「倭しうるはし」という望郷の想い、いかばかりだったか。その事蹟を馳け足で見てみました。

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 上掲の倭建命の和歌がそうであるように、まほろばには「故郷(ふるさと)」という意味もありそうです。ミコトは自身の故郷である大和盆地を、当時の都があり中心地だったことから「国のまほろば」と美称しています。が、「まほろば=故郷」とするなら、まほろばは独り大和盆地のみに限定されるものではなく、全国どの地にも普遍化し得るように思われます。

 一条貫之氏の『まほろば』の歌詞も、そのような解釈に基いて作られたようです。

 誰にでも等しくある故郷。そのままずっと住み続けているにせよ、遠く離れて暮しているにせよ。幼少の頃の宝物のような思い出が詰った故郷は、まこと「心のまほろば」です。

 「よみがえれ 故郷」

 このコーラス曲を初めて聴いた時(2012年1月)、私はこのフレーズやこの歌全体の感じから、前年の東日本大震災&福島第一原発事故後に作られた歌だろう、と思いました。それによってヒドく傷ついた日本の再生を願って作られたのだろう、と。

 しかし実際はそうではなく、3・11前年の2010年発表(同年秋頃?)だったようです。でも3・11を経験した今となっては、その痛みを受け止め、かつそれを乗り越えようとする「祈りの歌」であるように思われてならないのです。
 
 あまり踏み込んだことを言うべきではありませんが、時の首相がアピールするように、満3年が経過し、宮城、岩手両県の被災地復興はスムーズに進んでいるのでしょうか。福島原発は本当にアンダーコントロールされているのでしょうか。今なお避難生活をしている方々が27万人、仮設住宅暮しの方々が10万人。故郷は一変し元の場所には戻れず、高台に移住して老若問わず一から故郷を作り直さなければなりません。

 それでも近くに帰れる人たちはまだしも、福島原発危険地域から離れ県内外に移住せざるを得なかった方々はいつ故郷に戻れるのでしょう。1~4号機の燃料棒取り出し、汚染水処理、土壤の除染、そして廃炉・・・。気の遠くなるような工程。そもそも本当に戻れるのでしょうか。

 空が山が川が田畑が往宅地が海が地下水が、広く汚染されてしまった日本。それでも切なる祈りを込めて、「よみがえれ 日本」「よみがえれ 故郷」

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 繰り返しになりますが、感動的なこの『まほろば』を歌っているのは混声フォレスタです。中安千晶さん、矢野聡子さん、白石佐和子さん、小笠原優子さん、吉田静さんの5女声。澤田薫さん、横山慎吾さん、榛葉樹人さん、今井俊輔さん、川村章仁さん、大野隆さんの6男声。かつてのフォレスタフルメンバーによるコーラスだったのでしょう。

 コンサートにおけるポジション順にメンバー名を並べてみましたが、実際聴いてみますと女声は左の方から、男声は右の方から聞こえてきます。女声も男声もそれぞれに「誰の声」ということではなく、渾然一声として融け合った見事なまでに純度の高いコーラスです。

 作曲はフォレスタ総指揮の杉本龍之氏です。各メンバーの特質を知り尽した杉本先生による、心にくいばかりに行き届いた曲であるように思われます。

 『フォレスタ通信』の中に、
   清々しい「吟遊詩人」を目指して
 というキャッチフレーズがあります。この『まほろば』は、まさにそれに相応しい一曲です。「現代の吟遊詩人」フォレスタ、出来ましたら今後とも、新たな優れたオリジナル曲も歌っていただきたいものです。

(大場光太郎・記)

関連サイト
『フォレスタ通信』
http://foresta.music.coocan.jp/main/foresta.html
関連記事
『フォレスタの「汽車・三部作」』
http://be-here-now.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/post-e894.html
『フォレスタの「流浪の民」』
http://be-here-now.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/post-15bd.html
『白鳥は哀しからずや』
http://be-here-now.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/post-fa3f.html

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