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小林節・慶大名誉教授「解釈改憲は憲法ハイジャック」

-解釈改憲は「アベノナチス」による憲法9条へのテロであり、国民に対するテロと言うべきだ。「日本は国民皆兵制になる」というある人(故人)の警世の預告もある。私たちはもっと怒りと強い危機感を持つべきだ-

 安倍首相は、正規の憲法改正の手続きを経ずに、憲法9条が禁じる集団的自衛権行使に向けて大暴走しています。これは昨年、「いつの間にかワイマール憲法を骨抜きにしたナチスの手法にならって、国民に気づかれないようにこっそり改憲したらどうかね」と発言し、国際的非難を沿びた麻生副総理のシナリオどおりです。大変危険で憂慮すべき事態です。

 これには、憲法学の重鎮である小林節・慶大名誉教授の怒り爆発です。小林節(こばやし・せつ)氏は、末尾紹介のとおり『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日)などのコメンテーターとして鳴らした人です。『朝生』登場はイラク戦争直後頃と記憶していますが、切れ者の保守派論客という印象でした。

 その当時「憲法改正」を主張するなど、私は苦々しく思っていましたが、もちろん「正規の憲法改正の手続きを経て」ということです。そのような小林節・慶大名誉教授から見ても、極右安倍政権の暴走は目に余るということです。
 以下に転載する『日刊ゲンダイ』インタビューでは、憲法学の専門的見地から、解釈改憲や集団的自衛権のどこが問題なのかが多面的に語られています。じっくりお読みください。 (大場光太郎・記)                       

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注目の人直撃インタビュー 小林節・慶大名誉教授 (5月17日号)

 平和憲法改正に執念を燃やす安倍政権が昨年、憲法改正手続きを定めた96条を先行改正しようとした時に「裏口入学はダメだ」と叩き潰したのが、この人だ。学会の重鎮の怒りに、さしもの安倍首相も方向転換せざるを得なくなったのだが、そこで持ち出してきたのが閣議決定による解釈改憲で、限定的に集団的自衛権を認めてしまおうという“禁じ手”だ。度重なる安倍のデタラメに重鎮の怒りが再び、爆発!

■解釈改憲はあり得ない「憲法ハイジャック」

――96条改正を引っ込めたと思ったら、今度は解釈改憲で9条を骨抜きにしようとしていますね。いろいろな限定、条件を付けて、集団的自衛権を行使できるようにしようとしている。

 安倍政権は錯乱しているとしか思えません。まず、大前提として、憲法は国家権力を縛るものなのです。縛られる国家権力の中で一番強いのが内閣ですよ。その内閣が閣議決定で憲法解釈を変えて、憲法の精神をひとひねりしようとするなんて、あり得ないことです。この行為自体が憲法違反、「憲法ハイジャック」だと思います。

――まず、解釈改憲という手法がおかしいと。しかも、変えようとしている中身が現行憲法の根幹、平和憲法の破壊です。慎重な公明党を納得させるためにさまざまな限定を付けようとしていますが、条件を付ければいいってもんじゃありません。

 他国には許可なしに行かないとか、必要最低限とか、いろいろ条件を付けようとしていますが、その場しのぎの詭弁(きべん)です。いくら内閣が言葉で約束したって、後の内閣が「事情が変わった」「条件を変える」と言えば、それまででしょう。政治家は「信じてください」って言いますが、信じられません。権力者は信じられないから憲法があるんですよ。歴史を振り返ってごらんなさい。権力者を信じてロクなことはなかったでしょう。我々国民が唯一、安心出来るのは憲法なんです。だから、どうしても集団的自衛権を行使したいのであれば、国会で熟議し、3分の2以上の賛成を得て、国民にも資料を配り、議論を促し、国民投票に問うて、憲法を変えればいいのです。

■想定されている事態は個別的自衛権で対応できる

――限定の中身を見てみると、個別的自衛権で対応できるようなことばかりに見えますが、専門的にはどうでしょうか?

 北朝鮮と韓国が戦争を始めれば、米国も当事者になる。当然、在日米軍基地が狙われるので、これはすなわち、日本の個別的自衛権の話になります。太平洋で米軍と自衛隊が一緒に訓練をしている時に米軍が攻撃されれば、これも日本が攻撃されたのと同じです。訓練をしている先生と生徒がいて、先生がやられれば生徒も攻撃されたことになる。物流を支える海の廊下、シーレーンが攻撃されても、日本の自衛で対応できます。グアムに向けてミサイルを撃たれた場合はどうか。我々の領空に危険物を投げ込まれたのですから、警察権を行使し、除去すればいい。害虫駆除と一緒です。つまり、今、議論されていることはいずれも個別的自衛権を拡大して対応できるのです。そのように対応すれば、個別的自衛権以外に自衛隊は使えないのですからおのずと歯止めになる。しかし、集団的自衛権という大風呂敷を広げたら、原理的にはどこへでも出ていけますよ、ということになってしまう。

――集団的自衛権を限定するよりも、個別的自衛権を拡大する方が安全、安心ということですね。

 集団的自衛権というのは国際慣習法上の概念で、同盟関係の国がどこかで戦火に巻き込まれたら、無条件に助けに入るというのが本質です。つまり、本当に集団的自衛権を認めるというのであれば、片務契約である日米安保条約も双務契約に変えて、日本も米国を助けに行く義務を負わなければいけない。そんな覚悟がありますか? 私はそんな覚悟を持ちたくない。日本の同盟国は世界中、敵だらけじゃないですか? キリスト教とイスラム教は歴史的な戦争をやっている。武器の質量で劣るイスラム側はゲリラ作戦を展開し、それを米国はテロ犯罪だと批判する。その米国と一緒に戦うようになれば、東京で9・11が起こり得るのです。

――自民党の高村副総裁は最高裁の砂川判決を持ち出して、集団的自衛権は認められているのだと言っていましたね。今、行われている議論はあまりにもとっぴで驚かされます。

 高村議員は弁護士ですが、裁判の大原則を忘れています。裁判所の判決というのは、当該事件について、個別的に判断を下すものです。砂川裁判は在日米軍基地内に立ち入ったデモ隊を裁いたもので、その際に在日米軍の合憲性が問われたのです。米国が集団的自衛権を行使するために在日米軍を置いていることが、日本国憲法9条で禁じている戦力に相当するかどうかが問われたもので、日本の集団的自衛権の有無とは関係ない。さらにこの判決で最高裁判所は統治行為論に立ち、「日米安全保障条約のように高度な政治性を持つ条約については、一見してきわめて明白に違憲無効と認められない限り、その内容について違憲かどうかの法的判断を司法は下すことはできない」として判断から逃げたのです。最高裁が逃げた判例で、最高裁から集団的自衛権のお墨付きを得たという理屈はおかしい。集団的自衛権の議論を見ていると、いくつものデタラメが複雑に何重にも絡み合っているので、呆れています。

■安保法制懇の有識者は学識がない御用学者

――安保法制懇の方の議論、報告書はどうですか? こちらも元外交官や学者が入っていますが、まともな議論をしていたのでしょうか?

 安倍首相の私的諮問機関ですよね。有識者ということですが、どこに学識があるのか疑問です。憲法学の分野では駒大の名誉教授が1人入っておられるが、異端の人です。もちろん、異端だから悪いわけじゃないが、少なくとも、こういう議論をする時には、その学問分野の標準的見解を代表する学者が入ってしかるべきでしょう。

――座長代理の北岡伸一国際大学長はどうですか? 政治学ですが。

 テレビでも議論しましたが、噛み合わない。彼は約200ある世界の憲法の中で、スイスの憲法を取り上げて、国家と国民が協力する憲法を正当化していますが、そんな憲法はスイスだけです。そもそも、国家と国民が協力する憲法というのは無理がある。国民が国家に協力しているかどうかを判断、管理するのは権力側ですからね。国民を「協力しろ」と追い込む憲法になってしまう。こんなもんは憲法じゃない。北岡先生は立派な経歴だが、学者とは思えませんね。自分がお付き合いしたい権力者が気に入るような結論を導こうとしている御用学者にしか見えません。

――他の199の憲法は権力者を縛るためにあるんですね。

 人間は神じゃないから間違いを犯す。金を返さないやつがいるから民法があり、嫌なやつを殺す人間がいるから刑法がある。絶対王政では王様は神様だったから、間違いを犯さないことになっていた。しかし、近代市民革命以降、王の地位には普通の人間が就くようになった。普通の人間であれば、間違いを犯すので、憲法が生まれたのです。この歴史的事実を無視して、立憲主義を否定するのは卑しい行為です。

■立憲主義の歴史を全く知らない安倍首相

――安倍首相は私が最高責任者だ、と言い放ちましたね。

 あまりにもひどいので笑っちゃいましたよ。安倍首相は立憲主義について「王権が絶対権力を持っていた時代の考え方」と言いましたが、これも間違いです。そういう時代には立憲主義という概念がなかったのです。絶対主義のひどさを経験して、市民革命が起こり、二度とこういうことが繰り返されないように憲法が生まれた。安倍首相はあまりに初歩的な知識を欠いています。

――問題はそこまで無理をしてなぜ、集団的自衛権を認めさせたいのか。つまり、理屈じゃないんですよね。ただ自衛隊を海外に出したいのか。そんなふうに見えますが、どうでしょうか。

 積極的平和主義とか言ってNATOにも協力すると言っているでしょう。かつての米国や英国のように、世界の警察になりたいのか。世界中の紛争地に日の丸を立てて、突っ込んでいきたいんじゃないですか。大国と互角に渡り合いたくて。そこで死ぬのは普通の国民です。そう思うと心底、怖くなってきます。

▽こばやし・せつ 1949年生まれ、65歳。都立新宿高を経て慶大法学部卒。法学博士、弁護士。慶大教授を経て現名誉教授。「朝まで生テレビ!」などに出演。憲法、英米法の論客として知られる。「白熱講義! 日本国憲法改正」など著書多数。

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