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ギリシャ神話の中の薔薇(2)

 バラが花の女王なら、ギリシャ神話中の最高の美の女神は「アフロディーテ」です。両者を関連づけるように、「アフロディーテとバラの物語」が幾つも残されています。もちろんバラはほかの神との関連でも語られていますが、やはりアフロディーテのバラ物語が最も興味深いので、今回はこの女神とバラの関わりに絞ってみていくことにします。

アフロディーテの誕生とバラ

絵画(油絵複製画)制作 サンドロ・ボッティチェッリ「ヴィーナスの誕生」

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 この絵を知らない人はいないことでしょう。イタリアルネッサンスを代表する画家の一人ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』です。ヴィーナスはローマ神話における呼び名ですが、アフロディーテと同一の女神です。

 上古の日本がそうだったように、王権国家の建国にあたって神話の制定は極めて重要です。当時の新興国であったローマ帝国(ただし当初は王制、共和制)は、世界覇権を正当化する上で、ゼウス→ジュピターというように、多くを先行のギリシャ神話から換骨奪胎したと考えられます。

 アフロディーテの誕生についての、(異説はあるものの)ヘシオドスの『神統記』による神話は以下のとおりです。

 神々の父であるクロノス(時)が、父親のウラノスを殺し、その体の一部(男性器)を切り取って海に投げました。その時、それから出た血が海水と混じり合って白い泡となり、 アフロディーテはそこから生まれたとされています。そもそもアフロディーテとは、「泡から生まれた」の意味なのです。

 生まれて間もないアフロディーテに魅せられた西風の神ゼヒュロスが彼女を運び、キュテラ島に運んだ後、キプロス島に行き着きます。彼女が島に上陸すると美と愛が生まれ、それを見つけた季節の女神ホーラたちが彼女を飾って服を着せ、オリュンポス山に連れて行きました。オリュンポスの神々は出自の分からない彼女に対し、美しさを称賛して仲間に加え、大神ゼウスが養女にしたのでした。
 こうしてアフロディーテは、オリュンポスの十二神の一神となったのです。

 アフロディーテが生まれた時、神々はバラの花も一緒に創り、美の神である彼女の誕生を祝ったとされています。ボッティチェリの絵でも、彼女が巨大な帆立貝から誕生した時、周りに花が浮かんでいるのが描かれていますが、この花がバラの花なのです。

 アフロディーテの誕生と共にバラの花も一緒に創られたというのは、代表的な「美の花」としての面目躍如と言うべきです。

アフロディーテの恋愛遍歴 

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 アフロディーテは、大神ゼウスの命令により結婚することとなりました。
 その神というのは、鍛治の神ヘパイトスです。彼女は世にも稀なる美女なのですから、ヘパイトスもさぞや美男の神かと思いきや。何と彼は、ずんぐりむっくり背が低く、足が不自由、その上神々の中で一番の醜男でしたから、「美女と野獣」のカップルの誕生に皆驚きました。

 ゼウスがなぜ二人を結婚させたか、というと―。
 ヘパイトスはゼウスの息子の一人ですが、彼が「雷」を作ったので、そのご褒美としてアフロディーテを妻として与えることにしたというわけです。なぜなのか、ゼウスの認識では、雷の発明は絶世の美女に値いするほど偉大な発明だったことになります。

 ところで、アフロディーテは「愛と美と性」を司る神です。積極的に恋愛して、下々にそのお手本を示さなければならない立場(?)です。そのとおり、アフロディーテは夫がありながら、多くの男神と浮気し、父親の違う多くの子を産みました。しかしどれほど不倫を重ねても、彼女はいつもヘパイトスの元に返り、彼もいつも彼女を許してくれたのでした。 (以下次回につづく)

 (大場光太郎・記)

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ギリシャ神話選」カテゴリの記事

コメント

こんばんはm(__)m
お久しぶりです!
いつもお世話になってます☆
私、前から気になってたんですが300人委員会ってウキペディアで出すとオリュンポス十二神の名前が出るんですが
これは、悪神?ってことでしょうか?
ゼウスってネガティブの方なんでしょうか?

神様といっても色んなのがいるんですよね!?
伊勢と出雲は高い神様の復活ですよね。

オリオンって人間のアセンション?を絶対阻止したいとか、浅川嘉富さんの本であったんですが
ゼウスってどんなんだろう?て気になります。
前のブログ記事で凄いスケベだったとか書いてあり
あんまりいい人じゃないのかな?と。

投稿: 海 | 2014年6月20日 (金) 22時56分

どうも、こんばんは!

 まず、この『ギリシャ神話選』ですが、最初の頃の記事で述べているように、阿刀田高(日本ペンクラブ会長)の『ギリシャ神話を知っていますか』(新潮文庫)をタネ本として思いついたシリーズです。この本はギリシャ神話を現代的な切り口でとらえたり、なかなかユニークな本で、エロ話もけっこうあります。スケベ話が嫌いじゃない私は(笑)、読者へのサービスもあり、そんな阿刀田高のスタイルを真似たわけです。

 だから大神ゼウスについても、つい「歩く種馬神」(私の造語)などという不敬な表現もしました。しかし一方では、きちんと『ゼウスはなぜ好色なのか?』という一文で、ギリシャ文明&ギリシャ神話成立上から見たゼウスの好色性について、私なりの考察をしています。

 我が国官製神話『古事記』や、ドグマ的宗教教典『旧約・新約聖書』などには見られない、ギリシャ神話の大らかさ、開っぴろげさが私は好きなのです。というわけで―、

>ゼウスってネガティブの方なんでしょうか?

 ゼウスに限らず、ギリシャの神々がネガティブということはないと思います。300人委員会がギリシャ神話十二神をかたっているのはハク付けのためであり、単なるハッタリです。ヤツらイルミナティ・サタニズムの源流は古代バビロニアですから。いずれにせよ、「300人委員会こそ世界支配の奥の院」などと言われていますが、実態はほとんど機能していないようで、恐るるに足らずです。

 浅川嘉富氏の「オリオン云々」には、エササニ星のバシャールも含まれ、浅川氏は悪しざまにののしっておられるようです。私見では、余り硬直的に考えない方がいいと思うのですが・・・。浅川氏は、「龍蛇族」という用語以外知らないので保留とさせていただきます。

投稿: 時遊人 | 2014年6月21日 (土) 01時37分

知識量が本当に凄いですね・・・。
お忙しいとこすみません、教えて頂き有り難うございますm(__)m

私ですね、東京五輪はオリオンの人が私達の意識のレベルを上げさせないために送り込んだのかな?とか思ったんですよ(笑)
だからオリオンとか300人委員会とかイルミナティとかロックフェラーなど全部グルなのかな?とか思ってたんです。

ウキペディアってあんまりあてにならないですね。

でも過去でオリンピックはイルミナティのイベントって書いてあり、
あぁ乗っ取られてたのか!と分かりました。
でも中には、東京五輪が決まったら神の世の始まり、とか言う人もいましたが、西洋の価値観を終わらせて東洋の価値観に世界が変わるって役割が入っているんでしょうか??

TVとか五輪サイトでは、日本復活なのに、夢と感動とかスポーツの力しか言わないから、なんなんだろうなと思って理解に苦しいんですが・・・(笑)

ギリシャ神話読んでみたいけど、全部ネガティブなのかな?とか疑問だったので(笑)
聞いてみてよかったです。有り難うございましたm(__)m

投稿: 海 | 2014年6月22日 (日) 20時57分

 古代バビロニア(シュメール文明)あたりで始まったとみられるサタニズムですが、その後の各文明に引き継がれて、今日のフリーメーソン・イルミナティに至っていると考えられます。その意味では、ギリシャ神話のオリュンポス十二神もネガティブなものを含んでいるのかもしれませんが・・・。

 サタニズムのシンボルの一つである(古代バビロニア王ニムロドの)「一つ目(サタンの目)」はまた、古代バビロニアとはまったく系統の違う古代エジプト神ホルスの「ホルスの一つ目」と同一視されることがあるわけですし。ただそうなると、すべてに疑惑の目を向けなければならず、私たちの精神衛生上よろしくありません。

 できれば、「心はいつも青空」(私が敬愛する五井昌久先生の言葉)、いつもポジティブ、ワクワクでありたいものです。ギリシャ神話や各国神話などは、人類の貴重な文化遺産として楽しみながら読むのがいいと思いますね。

 東京オリンピックも今行われているW杯サッカーも、イルミナティ・イベントです。日本のGR突破はかなり困難ですが、バカ騒ぎ度は世界トップクラスだそうです。日本国民くらいイルミナティ・マスゴミのマインドコントロールに引っかかっている国民は他にいないんですよ。いずれにせよ福島原発や誘致の仕方、利権などを考えると、東京オリンピックは手放しでは喜べませんね。

 地球人類とシリウス人、オリオン人、プレアデス人などとの関わりを知る上で、『プリズム・オブ・リラ』という本が大変参考になります。

投稿: 時遊人 | 2014年6月24日 (火) 01時36分

いつも私の無知な質問に付き合って頂き有り難うございます。
文章のレベルの違いに
何回も読んで初めて理解出来ます。

プリズム・オブ・リラ買ってみますね!!!宇宙人系の本、何かいいのないかな?と思ってたんです。


バカ騒ぎが世界トップクラスとは、日本にいるから気付きませんでした。
でも私は五輪招致のやり方で、今までオリンピックは楽しみでしたが一切興味がなくなってしまいました。
でもこれに振り回されずこれからは、必要なこと学びたいです。
恥ずかしながら、古代バビロニアって何???状態だったので(笑)

時遊人さんみたいな方がいると、自分も勉強したいなと思いますね。

投稿: 海 | 2014年6月26日 (木) 00時36分

 「知るを楽しむ」とは、だいぶ前のNHK教育のある番組のキャッチコピーでした。純粋な知識欲は人間に本来的に備わった欲求の一つですからね。「知るが苦痛」とならない範囲で、楽しみながら知的欲求を満たしつつ、心の内面を豊かにしていきたいものです。

投稿: 時遊人 | 2014年6月27日 (金) 00時35分

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