« 「蘇州夜曲」の李香蘭逝く | トップページ | 安倍政治は問題から逃げる卑怯な政治である »

フォレスタの「蘇州夜曲」

         
     
 
 
    (「Foresta 苏州夜曲(旧版本)」(中国-Youke動画)

     http://v.youku.com/v_show/id_XNjM4ODg5MDky_type_99.html?f=441608962#fr.yk.folder.6
                  (フォレスタの蘇州夜曲・新バージョン-YouTube動画)
     https://www.youtube.com/watch?v=vWMvzaBfDYI

 今月7日に亡くなられた山口淑子さんを偲び、直前に『「蘇州夜曲」の李香蘭逝く』記事を出しました。タイトルに「蘇州夜曲」を入れたくらいですから、記事作成中YouTubeで当然『蘇州夜曲』をずい分聴きました。もちろん本家の李香蘭(山口淑子)のも聴きましたし、他の歌手によって歌われたものも聴きました。名曲中の名曲ですから、美空ひばりを筆頭に多くの歌手がカバーしているのです。

 YouTubeでは現在、渡辺はま子(1970年)、雪村いづみ、夏川りみ、田川寿美、一青窈&松浦亜弥、西川郷子、新妻聖子、アン・サリーらの『蘇州夜曲』がアップされています。何と今大問題のASKAまで歌っているではありませんか!(一言で言って、それぞれに歌い方に個性や特徴があって甲乙つけがたし。)

 それらを聴きながら私は、『この歌、フォレスタも歌ってたよなぁ。それも旧新2つあって、それぞれにいい味出してたのに。皆削除されちゃって』などと思っていたのでした。同記事完成後、『そのうち「蘇州夜曲聴き比べ」でも出すか』と思いたったある時、蘇州夜曲→中国の歌→中国版YouTube→Youke→フォレスタ!という連想がパッと閃いたのです。

 そもそもYouke動画のことは、第1次フォレスタ動画削除事件(2012年4月13日)の時の『フォレスタ動画が削除されちゃった』記事へのある人のコメントで知ったのでした。そこに、数は少ないながら、『別れの朝』『琵琶湖周航の歌』『あかとんぼ』などのフォレスタ曲が十数曲アップされています。その中に、本場中国ならでは、初代4女声版『蘇州夜曲』もあったはずなのです。

 矢も盾もたまらず、2年以上“お気に入り”に寝かせておいた「Youkeフォレスタ」を表に引っぱり出して探してみました。するとやっぱりありました!『フォレスタ 蘇州夜曲』が。それで今回こうして取り上げることができたのです、という「風が吹けば桶屋がもうかる」式の回りくどい説明で、どうもあいすみませんでした(笑)。

『Youke版FORESTA』http://www.soku.com/search_video/q_%EF%BC%A6%EF%BC%AF%EF%BC%B2%EF%BC%A5%EF%BC%B3%EF%BC%B4%EF%BC%A1

                       *
 (戦前中国における李香蘭の華麗な足跡のあらましは、直前の『「蘇州夜曲」の李香蘭逝く』記事をお読みいただくとして)満州で高まりつつあった李香蘭(リー・シャンラン)の人気を日本でも盛り上げるため、満映(満州映画協会)は東宝と提携して、李香蘭と当時の人気二枚目俳優だった長谷川一夫との共演映画を企画します。

 そうして昭和14年(1939年)から『白蘭の歌』『支那の夜』『熱砂の誓ひ』が制作され、「大陸三部作」としていずれも日本で大ヒットし、「中国美人女優」李香蘭の人気はいやが上にも高まっていったのでした。

 李香蘭は女優としてだけでなく歌手としても絶大な人気を博していくことになります。『白蘭の歌』の「白蘭の歌」「いとしあの星}、『支那の夜』の「支那の夜」「蘇州夜曲」、『熱砂の誓ひ』の「紅い睡蓮」など、各主演映画の主題歌、劇中歌を李香蘭自身が歌いました。奉天(現・遼寧省瀋陽市)での少女時代、帝政ロシアの亡命歌手マダム・ポドレゾフから声楽をみっちり教わった李香蘭の歌唱力はクラシックの専門家の折り紙つきで、各歌ともたちまち大評判となります。

 映画音楽で李香蘭の才能を引き出したのは、作曲家の服部良一でした。『白蘭の歌』を皮切りに、李香蘭主演映画はほとんど服部良一が音楽を担当していますが、特に李香蘭のために書き下した多くの曲は名曲として今日でも歌い継がれています。

 その代表的な曲が『蘇州夜曲』です。この曲は、昭和15年(1940年)6月公開の映画『支那の夜』の劇中歌として李香蘭が歌ったものです。なお『フォレスタ 蘇州夜曲』では、歌ったのは霧島昇/渡辺はま子と表示されていますが、これは内地(日本国内)でのレコード吹き込みがこの二人によって行わたことによるものです。

 『白蘭の歌』から『紅い睡蓮』まで、映画では(中国人)李香蘭が歌い、日本でのレコード化の際は(日本人)渡辺はま子が歌うという決めだったようです。それほど、当時はほとんどの日本人が「李香蘭は中国人」と信じて疑わなかったのです。

 今私の手元には、23日夜当市の中央図書館から借りてきたばかりの『李香蘭 私の半生』(山口淑子/藤原作弥共著、新潮文庫)があります。その中で特に『「蘇州夜曲」のころ』という一章が設けてあり(第7章)、そこに映画『支那の夜』や『蘇州夜曲』にまつわる興味深いエピソードが述べられています。本当はそのすべてを紹介したいところですがそれは出来ない話なので、(関心がおありの方は同書をお読みください)その“さわり”だけ以下に引用してみます。

(引用開始)
『支那の夜』については、単に大入りだったこと以外に、当時の世相や時局を反映した象徴的な作品であることを示すエピソードがたくさんある。とくに私にとっては漢奸(祖国反逆罪)容疑の罪状ともなった映画だけに、無知な時代の自分を見る恥ずかしい思いのする作品だが、いろいろな意味で思い出深い。
    (中略)
 大陸三部作が日本でヒットしたのは、ちょうど高まりつつあった大陸ブームという時代的な背景もあっただろうが、いずれも主題歌が映画におとらずにヒットしたことと無関係ではなかったと思う。いずれもストーリーは陳腐だけれど、背景を流れる音楽がドラマの舞台となった中国の名所旧跡の雰囲気と情感を現実以上にもりあげ、ラブシーンや風光明媚な場面でうたわれる歌が、ロマンチックな興奮をいっそう高める効果をあげていた。
    (中略)
 (服部良一氏の述懐)「上海から帰ってきて、水さん(伏水監督)のためなら、と(『蘇州夜曲』の作曲を)引きうけた。『白蘭の歌』以来、李香蘭の才能を引き出す音楽をいつか作りたいと思っていたこともあってね。西条八十さんの『蘇州夜曲』の詞はもうできていた。私は旅行中に浮かんだ“支那楽”の曲想を下敷きにしてアメリカの甘いラブソング風にまとめ、五線紙に一気にあのメロディーを書きあげた」 (引用終り)

                       *
 「えっ、そうだったんだ!」。今までずっと、この歌は「チャイナメロディーオンリー」で作られたものとばかり思っていたのに。片方では「アメリカの甘いラブソング」を意識していたとは!当時は学問の世界などで、「和魂漢才から和魂洋才へ」と唱えられていたかと思いますが、服部良一はそのどちらも駆使しながら『蘇州夜曲』を作り上げたことになるわけです。そのためなのか、この歌は当時欧米でも評判になったそうです。

 この詞にしてこの曲あり。「詞はもうできていた」という西条八十(さいじょう・やそ)の詞がまた秀逸です。漢詩のように簡潔で、若い二人が見ている「水の蘇州」の宵の情景がくっきりと目に浮びます。

 この歌における西条の作詞のプロセスは分リません。西条も服部同様、蘇州などを旅行して作ったものなのでしょうか?既に『フォレスタの「かなりや」』で西条八十の尋常ならざる想像力を垣間見た私には、彼は現地に行かず、イマジネーションだけでこの類い稀な名詞を書き上げたとしても不思議ではないように思われるのです。

                       *
 冒頭で触れましたが、今回取り上げたのは、矢野聡子さん、中安千晶さん、白石佐和子さん、小笠原優子さん、4人の初代女声による『フォレスタの「蘇州夜曲」』です。

 この曲はこのバージョンのほかに、昨年、中安千晶さん、上沼純子さん、内海万里子さんの3人による新バージョンが公開されました。確か1番が上沼さん、2番が内海さん、3番が中安さんという、3人がそれぞれのパートを独唱し合うスタイルだったかと思います。どちらかと言うと「旧バージョンびいき」の私は、新バージョンについてはつい辛口になりがちです。が、こちらの『蘇州夜曲』も『なかなかいいぞ!』と思っていただけに(動画がなくて)ご紹介出来ないのが残念です。

 さあ、初代4女声による『フォレスタの「蘇州夜曲」』についてです。

 『蘇州夜曲』は、西洋音楽的に表現すれば『蘇州小夜曲』つまり『蘇州セレナーデ』となるのでしょうか?そんな甘美でロマンチックな名曲を、初代4女声はしっとり叙情的に歌い上げています。先に挙げたYouTube動画にアップされている歌手たちの『蘇州夜曲』は、そのほとんどが独唱で、コーラスとしての『蘇州夜曲』は女声フォレスタだけだと思います。その意味で、ユニークで新鮮味のある『フォレスタの「蘇州夜曲」』です。

 そしてそのコーラスもよく聴いてみると、全員音大出身だけあって(どの歌もそうですが)通り一ぺんに歌声を重ねただけのコーラスではなく、たとえば歌そのものも小笠原優子さんの高音パートと白石佐和子さんの低音パートのほど良いバランス、中安千晶さんの聴かせる上ハモなど、随所にプロならではの“隠し技”のうかがえる『フォレスタの「蘇州夜曲」』です。

 それに皆さんチャイナドレスのような黄金色の衣裳に身を包み、さながら(中国風に言えば)4人の「美的姑娘」(美しいクーニャン)という立ち姿です。このコーラスで強いて一人を挙げるとするなら、やはり2番を独唱している矢野聡子さんということになろうかと思います。矢野さん独特の高い声、そして(かつて熱烈な矢野さんファンだった人のコメントを借りれば)「フランス人形のような」可愛らしい顔立ち。矢野さんは中国の人たちにもけっこう“受ける”のではないでしょうか!?

 ヒアノ演奏は南雲彩さんだと思いますが、4女声のコーラスにマッチしたなかなか良い演奏です。ラストなど、寒山寺の鐘の音(ね)を模したか4つの音に続いて水の流れのようなエンディングで大変グッド!です。 

 (大場光太郎・記)

|

« 「蘇州夜曲」の李香蘭逝く | トップページ | 安倍政治は問題から逃げる卑怯な政治である »

フォレスタコーラス」カテゴリの記事

コメント

自遊人 様

長文の山口淑子(李 香蘭)氏の記事、有難う御座います、お疲れ様でした。
昭和を代表する方がまた一人逝かれました、記事に触れながら、我々の世代が輝いていた昭和時代を懐古し、いつもながら博学で時代背景を良く吟味された内容に感嘆致しました。
以前にも記事の中で紹介されていた、中国版 you tube (Youke)の動画も見させていただきました、数は少ないですがフォレスタの動画が並んでいますね。
李 香蘭さんの満映女優時代のエピソードや作曲家服部良一氏とのかかわりなど大変興味深く拝読させて頂きました。
「蘇州夜曲」は、西条八十氏の詞が先に在って服部氏が曲を付けたようですが、正に名コンビによる作品なのですね、大流行した理由がよく解ります。

さて、フォレスタの歌う「蘇州夜曲」ですが、
トピ主さん同様「旧メンバーびいき(特に小笠原さん・矢野さんファンです)」の私には旧メンバーの歌唱が身に沁みます(新メンバーももちろん良いのですが・・・・)
両方とも録画したものを持っていますので、機会と場所が有ればアップします。

フォレスタファンから you tube が寂しくなったとの声が、あちこちで聞こえます、フォレスタファンの要望にこたえる意味で、覚悟しながら手持ちの動画をアップしたいと思います。
まずは、私的にファンである小笠原さんと矢野さんのソロが入った曲を6曲出します。
 
小笠原さんソロ
①ラ・ノビア
②君の名は
③津軽のふるさと
 
矢野さんソロ
①庭の千草
②白い色は恋人の色
③夕焼け小焼け

先日この場の「坊がつる賛歌」にコメントされている「うらわの」さんが要望されていた「津軽のふるさと」を入れましたので、このコメントを読まれていればアクセスして見て下さい。(トピ主さん、この場を伝言板代わりに使いすみません、悪しからずお許しを)

昨日、非公開でアップしましたが、すでに「第三者のコンテンツと一致しました・・・・・・」
の表示が出ました、機械的な警告送信のようですが部分削除される可能性が大です、残したければ、早いうちに自己責任でDLなど処置をされた方がいいかと思います。

状況を見ながら順次アップを考えます。

投稿: nonnta | 2014年9月26日 (金) 15時37分

nonnta様

 いつもコメントいただきありがとうございます。
 またぞろブログを構っていられない事情により、返信が遅くなり大変申しわけありませんでした。

 当記事につき過分なお誉めに預り恐縮に存じます。それより何より、この度フォレスタ動画アップを決意されたとのこと、一フォレスタ動画ファンとして大歓迎です!『今度ばかりは投稿者は現われないかぁ』と諦めかけていただけに、大変嬉しく思います。

 早速貴投稿(「nonnta1944」様)のフォレスタ動画を幾つか聴かせていただきました。各曲ともご自身の寸評付きの試み、大いにけっこうかと存じます。投稿には障害もあるようですが、引き続き「フォレスタ名コーラス」の数々をアップいただければと思います。

 厚かましいリクエストですが―。今読み進めている『李香蘭 私の半生』で、大陸における李香蘭と淡谷のり子の意外な接点を知りました。また同書によって『別れのブルース』に関する新たな秘話を知りました。『続「別れのブルース」秘話』として紹介したいと考えています。つきましては、もしおありでしたら『別れのブルース』のアップをお願い致します。

 また、『蘇州夜曲』ついでに、戦後のチャイナメロディの名曲、『桑港のチャイナ街』も近いうち取り上げようかな、と考えています。この歌の吉田静さんのパフォーマンスは、最高かと。吉田さんがらみでは、これからの季節、『女の意地』などもいいですね。

 その他、『この道』『叱られて』(いずれも旧バージョン)・・・。「いい加減にせんかい。厚かましいにもほどがあるぞ!」とお叱りを受けそうですが、当ブログ「フォレスタコーラス」では60曲近く取リ上げていますが、そちらの各歌もおいおいと・・・。いえ、本当にぼちぼちとでけっこうですので。

 「削除されないための傾向と対策」としましては、フォレスタコーラスに花や風景の画像をかぶせたものはいつまでも残る可能性が高そうです。コーラスの著作権はBS日テレにあるとしても、画像の著作権は投稿者のもので、それを削除することは逆著作権法侵害になりかねないからです。ただこのような動画ですとCDとあまり変わらないなってしまいますが・・・。

 アップしていただいた『津軽の故郷』、当ブログアクセス状況からも意外なほど人気がありました。なお「うらわの様」、コメント返信の遅さにお怒りになり、もう当ブログを訪問されていないかもしれませんが、アップされた同曲きっとお聴きになっておいでのことでしょう。

 矢野聡子さん最高パフォーマンスの『庭の千草』、来月中に取リ上げたいと思います。それから今思い出しましたが、『蘇州夜曲』(旧新両バージョン)のアップもお願いします。(いよいよもって厚かましいヤツだ-笑-)

 (昨深夜不要データを削除したためか、パソコンの滑りがだいぶ違います。いずれにせよ超過容量のため、またじきに重くなりますが・・・。)(29日AM9:00)

投稿: 自遊人 | 2014年9月27日 (土) 00時37分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 「蘇州夜曲」の李香蘭逝く | トップページ | 安倍政治は問題から逃げる卑怯な政治である »