(小笠原優子さんの復帰を祝し)フォレスタの「美しき天然」
旧聞に属することで大変申し訳ございません。
ほとんどのフォレスタファンの方々はとうにご存知かと思いますが、結婚・出産・子育てのため長くフォレスタ活動休止中だった小笠原優子さんが、今年遂に復帰されました!『フォレスタ通信』サイトの告知では、「当面は(東京)近郊のコンサートから」とありましたが、コンサートのみならず、上の画像どおり『BS日本・こころの歌』収録にも一部参加されています。
小笠原優子さんのご復帰。フォレスタファンの一人として、心よりお慶び申し上げます。本当におめでとうございます。
私が、小笠原さんの『BS日本・こころの歌』一部収録参加を知ったのは、「on ojisann」さんの最近の動画投稿によってでした。余談ながら、このようにon ojisannさんを初めとした複数の方により、徐々にフォレスタ動画が増え始めていることを大変嬉しく思います。
ただどちらかと言うと新メンバーによるコーラス動画が多いようです。欲を言えば、大変厚かましいお願いながら、代表例として『別れのブルース』『みかんの花咲く丘』『月の沙漠』『浜千鳥』『花かげ』など、初代女声+吉田静さんの頃の懐かしい動画も・・・と思います。どなたかアップをお願いできれば幸甚に存じます。
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『美しき天然(うるわしきてんねん)』は、武島羽衣作詞、田中穂積作曲の唱歌として、1902年(明治35年)に発表されました。
この歌はそもそも、当時私立佐世保女学校の音楽教師だった田中穂積(たなか・ほずみ)がかねてから、同地の北松浦半島西岸に広がる九十九島(くじゅうくしま)の美しい風景を教材にしたいと考えていたことに始まります。そこで折りよく入手した武島羽衣(たけしま・はごろも)の詩に作曲し、この歌は誕生しました。武島の詩は、田中の思い描いていた九十九島にぴったりだったといいます。
この歌は、女学校の愛唱歌として地元では長らく親しまれてきましたが、広く一般に知れ渡ったのはかなり後のことです。活動写真の伴奏や、サーカスやチンドン屋のジンタ(市中音楽隊の意)として演奏されたことも、この曲が有名になった大きな要因の一つでした。
詞を作った武島羽衣は、東京帝国大学国文科、同大学院を経た後、東京音楽大学(現・東京藝術大学)、日本女子大学、聖心女子大学などで教鞭を執った詩人、国文学者であり、当時超一流の教養人でした。この『美しき天然』の歌詞は、(同じく武島作詞の)滝廉太郎作曲の『花』とともに、武島作品の精華であるように思われます。(ここまで『ウィキペディア』を参照)
歌詞は1番から4番までありますが、全体を通してひたすらな天然自然賛歌です。それとともに、美しき天然を「かく在らしめている」神への賛歌でもあるようです。
余計な事ながら―。各番の最後のフレーズで謳われている「神」とは、自然万物を生み為しかつ日々生成化育し給うわが国固有のアニムズム的、汎神論的な自然神としての「産み育む」神であるとともに、明治以来本式にもたらされることになった「神初めに天地を創り給えり」というキリスト教的一神教の「創った」神の両義がありそうです。と言うより、この歌にあっては、その両神が見事に和洋融合しているようでもあります。
難解な古語や雅語を駆使して歌われているのは、2番や3番に顕著なように、「雪月花」あるいは「青松白砂」といった王朝文化以来伝統的な自然への美意識です。これは武島が国文学者であったことに由来するものなのでしょう。
この歌の発表(明治35年)の少し前に発刊された(西洋文学の影響による)国木田独歩の名作『武蔵野』(明治31年)の中の、「昔の武蔵野は萱原のはてなき光景をもつて絶類の美を鳴らしてゐたやうにいひ伝えてあるが、今の武蔵野は林である」と言うような「雑木林の美」などを賛える歌はまた別の歌に拠らなければなりません。
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(BS日テレサイト『BS日本・こころの歌』からお借りしました)
『美しき天然』の楽譜には「ワルツのテンポで」と表示されているそうです。なるほど言われてみれば。「♪そーらにー(3)さえーずる(3)とーリのこえー(3)・・・」、見事な三拍子の歌であるようです。
武島羽衣の詞がそうであるなら、田中穂積の曲もまた格調高く典雅なメロディです。
確かこの歌は初代女声4人によってすでに歌われていたはずです。その元の女声コーラスもなかなか良かったと記憶していますが、ごらんのとおりこのたび、男声、女声フルメンバーによる新バージョンとして歌い直されました。
しかもその中に冒頭申し上げたとおり、長期休養中だった小笠原優子さん(ソプラノ)が加わり、また新男声として塩入功司さん(ハイバリトン)が加わりました。男声7人(テノール3人、ハイバリトン1人、バリトン3人)、女声6人(ソプラノ5人、メゾソプラノ1人)、計13人による圧巻、壮観の混声合唱です。
男声&女声渾然一体となったフルコーラスです。かつての『まほろば』を髣髴してしまいます。フォレスタは、歌によって一人の人がメーンとなって独唱したり、デュエットがあったりと、多彩なコンビネーションがありますが、合唱の基本と思しきこのような全体合唱もいいものですね。
「かわいいピアニスト」(と、つい余計なフレーズを冠したくなる)吉野翠さんのピアノ演奏も、軽快で流暢で、なかなかいいです。今回も、以前ある歌のある人のコメントにあった「おすまし顔」でピアノに向かっていて、ほほえましい!なお余談ですが、当ブログ検索フレーズで見るかぎり、吉野翠さんは総勢16人のフォレスタメンバーの中でも、(脇役なのに)ベスト5に入るほどの人気ぶりです。
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人気トップはもちろんこの人、復帰なった小笠原優子さんです。
5月の「きゅりあんコンサート」終了後に
やっぱり優子さん、美人!(小笠原さんブログ画像より)
この歌のコーラス全体の印象から、『これでフォレスタ全体が安定してきたな』という感じがします。なんとなくしっくりした調和が感じられるのです。これぞ「小笠原優子復帰効果」です。
一例として、白石佐和子さんを取り上げます。
白石さんは、昨年の各歌の動画を拝見するに、なんとなくキツく険しい表情になっていて、大変失礼ながら『この人少し老けたな』と思わせられました。おそらく責任感の強い彼女のこと、小笠原さん、矢野聡子さんという二枚看板が抜けた穴を何とかカバーしようと必死だったのに違いなく、相当の心労があったのではないでしょうか。
ところが(小笠原さん復帰が決まった)今年の白石さんはどうでしょうか。すっかり表情が和み、のびやかな本来の白石さんに戻っておられます。それに去年より若やいで感じられます。重い肩の荷が下りた感じなのではないでしょうか。
やはり女声フォレスタにあって、最年長でもあり、肝心の歌唱力も折り紙つき、しかも唯一結婚・子育てを経験しておられる小笠原優子さんの存在は不可欠です。女声にリーダーというポストがあるのかどうか私にはわかりませんが、小笠原さんは女声各メンバーにとって「精神的支柱」であることは間違いないようです。
男声は(小笠原さんのご主人の?)大野隆さんを中心に、女声は小笠原優子さんを中心に、世の「良い歌を愛する」人たちのために、この『美しき天然』のような素晴らしいコーラスを今後ともどしどし発表していっていただきたいものです。
(大場光太郎・記)
参考サイト
『EVENT & FROM YUKO』(小笠原優子ブログ)
http://musication.cocolog-nifty.com/blog/
BS日テレ『BS日本・こころの歌』
http://www.bs4.jp/music/guide/kokoro/index.html
関連記事
『フォレスタの「まほろば」』
http://be-here-now.cocolog-nifty.com/blog/2014/03/post-3d3b.html
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コメント
ここで忘れてはいけないこと!
この小笠原優子さんが復帰と同時に男声新メンバーに元ヘキサガイズの塩入功司氏が加入して一気に歌唱担当者が13人と賑やかになったことを……
さらにこの塩入氏は辰巳真理恵ちゃん(ソプラノ歌手・俳優の辰巳琢郎さんの娘)のミュージカルにおける“師匠”でもある方で、歌声もミュージカル俳優っぽい声質だったんですよね。
投稿: 強竜再燃 | 2015年2月26日 (木) 09時57分