折り折りの短歌(3)
おとといの雨で少しの水溜りそれを飲まんと鳩が降り来る
人気(ひとけ)なき小公園の夕間暮れブランコ一つ小(ち)さく揺れてる
夕暮れは嫌だねと云いし人いしが私は好きだこの夕暮れが
明と暗交錯したる夕暮れは詩が生まれ出す時刻なんです
冬川に鴨がたくさん浮びいてめんめめんめに動き回れり
「安らか幸せシマチッチ」
シマチッチの縄張りなりし公園のはらはら落ち葉一面に敷く
年の瀬と云うことのほか何もなき十二月二十六日の真っ赤な夕日
味気なきおらが元旦味気あるものにせんとて外に出てみる
君は誰かく問う前に私が誰かもしかとは知らぬ
寒風がもろ吹き荒ぶ川辺道真向かう夕星ふり仰ぎ行く
市街地の川の低きをひたすらに上流に飛ぶ一羽の白鷺
冬の雨ようよう止みし黄昏の薄日に浮かぶ薄雪の峰
「あかいくつ」号
「あかいくつ」てふメルヘンなバスありて浜の通りを行き来したりき
マスクの子ビルのウィンドウの前に立ち映る美人を飽かず見ている
(神奈川県)大山
真夜更のオリオン大山の上にありいよよすくりと立ちていたりし
荒れている裏道小道ふきのとう繁く生えいし水路道なり
春めいた気配ただよう街歩き忘れし夢がふとよみがえる
道祖神(私が見たのはもっと粗末で崩れていた)
早春の日が照っている昼下がり道辺の古き道祖神など
せいぜいが波乱十丈の生(せい)なれど幾生(いくしょう)分を生きし心地す
(大場光太郎)
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