折り折りの短歌(8)
夏休みがらんとしたる校庭で少年独り屈(かが)みていたり
わたくしの視えざる体いっぱいに広げ触れたし入道雲を
扉(と)が開き美し熟女出で来たり花に水遣(や)る夏の夕暮れ
虫かごに蝉をいっぱい詰め込んでジージー鳴かせ少年が去る
夕暮れの公園ベンチ『ファウスト』の一節一節意味新たなり
カナカナが遠くの森で鳴いている町の外れの夏の夕暮れ
まだ青さ残りし宵の西空に低く掛かれる秋の眉月(まゆづき)
清澄な九月二日の昼下がり赤とんぼの群れ低く飛びたり
私鉄線停まる一つの駅ごとに暗くなりゆく秋の夕暮れ
あらためて生き直すぞと思わせる台風一過の秋の夕映え
雲覆う阿夫利峯(あふりね)近き土地にいて何やら寂し秋の夕暮れ
用水の小橋たもとの酔芙蓉(すいふよう)去年(こぞ)根元より枝を伐られし
根元より枝伐られたる酔芙蓉また葉が繁り花を咲かせり
夜(よ)の辻にひそりと台を構えつつ客待ち顔の女占い師
建て込みし住宅街の方々でリンリン鳴きし夜の虫かな
ビル連なる繁華な街の一処(いっしょ)よりほろと聞こゆる夜の虫かな
この国を滅びの淵に誘い込む戦争法案絶対反対!
(大場光太郎)
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