私の百冊
プラトンは懐かし。されど真理はさらに懐かし。
昨年初秋頃、たまたま訪ねたあるサイトに「和尚ラジニーシの百冊」が紹介されていました。詳しい内容は忘れてしまいましたが、さすがは覚醒者ラジニーシと思うような名だたる宗教書・思想書などの名著に混じって『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』が入っているのが意外でした。
それはともかく。それに触発されて『オレにとっての百冊はどんなだろう?』とその時考えたのです。ですからこの記事は、本当なら「読書の秋」にふさわしく昨年の秋頃まとめて公開する予定でした。が、諸般の事情によりなかなか取りかかる事が出来ず、まだおとそ気分どっぷりのお正月に公開することになった次第です。
いずれにしましても、これは私自身の今後の読書意欲をさらに促す試みであり、また大変おこがましい事ながら、これをお読みの読者の方々へのわたし流の「読書のすすめ」でもあります。
近年は「活字離れ」が問題視されています。これは既に記事にもしましたが、「銀の匙授業」「奇跡の教室」として有名だった灘校の故・橋本武先生は、「国語力が他のすべての学科のベースになる。国語力のあるなしが全体的学力を左右する。国語力とは物事の本質に深く迫っていく力であり、それは「生きる力」と言い換えてもいい」と語っていました。
私が考えますに、国語力は基本的に「読書」によって養われるのです。
それでは読書によって養われる能力とは何でしょうか?読解力、推理力、洞察力、想像力、論理的な思考力、判断力、文章力など多面的な力が伸びると考えられます。また読書を積み重ねていけば、特に辞書など引かなくても語彙は自然に豊かになっていくものです。読書によって間違いなく心的世界・心内宇宙は拡大するのです。
江戸時代から戦前までの知識人は難解な四書五経を必須の教養として軽く読みこなし、戦後も近年まで国民の読書熱は世界水準から見ても高いものがありました。そういう土台に立って国際的に高い児童学力となり、飛躍していえば驚異的な高度経済成長を支えてきたと言っても過言ではないと思います。
しかし近年国民の活字離れが顕著になってきました。その結果国際的にわが国経済も児童の学力も長期低落傾向です。事態を重く見た教育界は、一部小学校で「読書授業」への取り組みが始まり目覚しい成果を挙げつつあるようです。
幼時からの英語学習など百害あって一利なし。真っ先に養うべきは国語力であり、読書力なのです。
能書きをだいぶ長々と述べてしまいました。
それでは「私の百冊」を始めたいと思います。以下に挙げたのは私が完読したものに限りました。また同じ作家で何作品も読んだケースもありますが、その場合は一番感激、感銘を受けた一冊のみを挙げることにしました(短編など2つ挙げているケースあり)。
便宜上【日本文学】【外国文学】という具合に項目化しました。
また参考のため、読んだ年代を大まかに三つに区切り、左端の「まる印」で示しました。○は中学・高校時代、◎はそれ以降から40代、●は50代から現在までです。
私の百冊
【日本文学】
○雨月物語(上田秋成)
○雁・高瀬舟(森鴎外)
○こころ(夏目漱石)
○武蔵野(国木田独歩)
◎高野聖(泉鏡花)
◎遠野物語(柳田國男)
○破戒(島崎藤村)
○城之崎にて他(志賀直哉)
◎生まれ出ずる悩み(有島武郎)
○友情(武者小路実篤)
●銀の匙(中勘助)
◎河童・杜子春他(芥川龍之介)
◎田園の憂鬱(佐藤春夫)
○銀河鉄道の夜(宮沢賢治)
○春琴抄(谷崎潤一郎)
◎美しい村・風立ちぬ(堀辰雄)
○路傍の石(山本有三)
●濹東綺譚(永井荷風)
○三国志(吉川英治)
○李陵・弟子他(中島敦)
○斜陽(太宰治)
◎仮面の告白(三島由紀夫)
◎野火(大岡昇平)
◎砂の女(安部公房)
●ゼロの焦点(松本清張)
◎楢山節考(深沢七郎)
●キッチン(吉本ばなな)
【外国文学】
◎水滸伝(施耐恩)
○神曲(ダンテ)
○ハムレット(シェイクスピア)
○ロビンソン・クルーソー(ダニエル・デフォー)
○若きウェルテルの悩み(ゲーテ)
○赤と黒(スタンダール)
○クリスマス・キャロル(チャールズ・ディケンズ)
○黒猫・他(アラン・ポー)
○モンテ・クリスト伯(アレクサンドル・デュマ)
○嵐が丘(エミリ・ブロンテ)
○みずうみ(シュトルム)
○父と子(ツルゲーネフ)
○罪と罰(ドストエフスキー)
◎不思議の国のアリス・鏡の国のアリス(ルイス・キャロル)
●脂肪の塊(モーパッサン)
●サロメ(オスカー・ワイルド)
●ハックルベリ・フィンの冒険(マーク・トウェイン)
○タイムマシン(H・G・ウェルズ)
●どん底(ゴーリキー)
◎バスカビィル家の犬(コナン・ドイル)
○桜の園(チェーホフ)
●トニオ・クレーゲル(トーマス・マン)
○ジャン・クリストフ(ロマン・ロラン)
●赤毛のアン(L・M・モンゴメリ)
○狭き門(アンドレ・ジイド)
○春の嵐(ヘルマン・ヘッセ)
○変身(フランツ・カフカ)
○阿Q正伝・故郷他(魯迅)
○武器よさらば(ヘミングウェー)
○大地(パール・バック)
●八月の光(ウィリアム・フォークナー)
○異邦人(アルベール・カミュ)
◎地球幼年期の終わり(A・C・クラーク)
◎賢者の石(コリン・ウィルソン)
【詩集】
○海潮音(上田敏訳詩)
◎世界青春詩集(藤原定編)
○立原道造詩集(立原道造)
◎バイロン詩集(バイロン)
◎シェリー詩集(シェリー)
○草の葉(ホイットマン)
◎リルケ詩集(リルケ)
○タゴール詩集(タゴール)
【思想・宗教】
○ソクラテスの弁明・クリトン(プラトン)
◎新約聖書(-)
◎バガバットギータ(-)
◎聖なる科学(スワミ・スリ・ユクテスワ)
◎あるヨギの自叙伝(パナマハンサ・ヨガナンダ)
○空想から科学へ(エンゲルス)
○人生論(トルストイ)
○愛と認識との出発(倉田百三)
◎日本的霊性(鈴木大拙)
◎英知(サティア・サイババ)
【ノンフィクションその他】
○ろうそくの科学(ファラデー)
○さまよえる湖(スウェン・ヘディン)
○キュリー夫人伝(エーヴ・キュリー)
○黄河の水(鳥山 喜一)
◎共同幻想論(吉本隆明)
●思考は現実化する(ナポレオン・ヒル)
●量子の宇宙のアリス(ウィリアム・B・シェインリー編)
【スピリチュアル】
◎大本神諭(出口直伝達)
◎日月神示(岡本天明伝達)
◎火水伝文(我空徳生伝達)
◎エメラルド・タブレット(-)
◎波動の法則(足立育朗)
●プレアデス+かく語りき(バーバラ・マーシニアック)
●プレアデス 銀河の夜明け(バーバラ・ハンド・クロウ)
●バシャール(ダリル・アンカ)
●黄金の約束(ロナ・ハーマン)
●レムリアの真実(オレリア・ルイーズ・ジョーンズ)
●フラワー・オブ・ライフ-古代神聖幾何学の秘密(ドランヴァロ・メルキゼデク)
●ハトホルの書(トム・ケニオン&バージニア・エッセン)
●エイブラハム 引き寄せの法則(エスター&ジェリー・ヒックス)
以上です。
この結果について述べてみたいと思いますが、少し長くなりそうなので「続編」とします。
なお冒頭の「プラトンは懐かし。されど真理はさらに懐かし。」は、中学校の図書館の入り口を入った内壁の扉左横に縦書きの毛筆で掲げてあった言葉です。
これを書かれたのは、中学1年時の担任だったT先生です。以前の記事で何度か紹介させていただきましたが、この先生は当時30代半ばの女性の国語&数学教師で、博学でかつ達筆な人でした。
T先生には中学を通してずっと目をかけていただきました。
思い出の一つは、中一の夏休み直前一冊の文庫本を渡されたことです。見ればヘルマン・ヘッセの『車輪の下』。先生いわく「これを夏休み中に読みきって感想文を書いてきなさい」というのです。
ということで読み出しましたが、読むほどにぐいぐい引き込まれ比較的短期間で大感激しながら読み終えました。小学高学年時は少年版『シャーロック・ホームズ』『怪盗ルパン』全集をほぼ読破しましたが、本格的西洋文学など興味の外でした。しかしこの本によって西洋文学&文学への目が初めて開かれたのです。
夏休み明け読書感想文を先生に提出したところ、後日先生の手で朱筆がいっぱい入れられて返され、「このとおり再度書き直して再提出するように」とのこと。結果、大添削された感想文が夏季の学校誌に掲載されたのです。
今考えれば、それはT先生流の私への文章上達指南だったようです。以後そういう事が何度か繰り返され、中二の頃からは添削無しの私の生の文章が学校誌に載るようになりました。いろいろな面でT先生は私の郷里でのありがたい恩師です。 (以下次回につづく)
(大場光太郎・記)
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