【カルチュアとは何か】犬養毅元首相の孫、評論家の犬養道子さん逝去
-他に取り上げるべき最新ニュースもある中、今回はこの人の訃報に接しどうしても取り上げたくなった。評論家の犬養道子さんが24日、逝去されたのである。とはいっても、これをお読みの若い人たちは「犬養道子って誰?」かもしれない。無理もない。犬養さんは享年96、活動のピークは何十年か前だったのだから。犬養道子さんの略歴については、以下転載の読売ニュースでも伝えられているが、まずもって「5・15事件」(1932年5月15日)で青年将校たちの凶弾に倒れた犬養毅元首相のお孫さんなのである。30代後半より評論家として活躍しておられた。私にとって何より思い出深いのは、ちょうど半世紀も前のことになるが、昭和42年、私が高校2年の時、母校に講演に来られお話されたことである。母校は犬養元首相と少しばかりご縁があり、その縁により山形の田舎高校までお越しくださったのだ。その時のお話のようすなどは、当ブログ開設年の「万物備乎我」シリーズでご紹介したが、今回改めて再掲載する。講演に来ていただいたのは犬養道子さんが46歳頃だったようだが、読売ニュースにあるとおり、犬養さんはその後世界的な飢餓問題、難民問題に積極的に取り組まれた。単なる机上の評論家から世界を視野に入れた実践的活動家へとステージアップされたのである。祖父・犬養毅の「骨太のDNA」をしっかり受け継がれた人だったように思われる。犬養道子さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。 (大場光太郎・記)- 犬養道子さん (読売新聞)
犬養毅元首相の孫、評論家の犬養道子氏死去
https://news.nifty.com/article/domestic/society/12213-20170724-50037/
2017年07月24日 11時31分 読売新聞
難民支援活動や聖書についての著書で知られる評論家、犬養道子(いぬかい・みちこ)さんが24日午前5時28分に亡くなった。
96歳だった。葬儀の日取りは未定。
白樺派の作家で法相を務めた犬養健の長女として、東京に生まれた。祖父は5・15事件で暗殺された元首相の犬養毅。1958年に欧米体験をつづった「お嬢さん放浪記」でデビューし、比較生活文化に関する評論活動を展開した。
79年、難民キャンプの写真を目にして飢餓や難民問題に関心を深め、世界各地のキャンプを訪問。南北問題を世界的視野で見つめた「人間の大地」、「国境線上で考える」(毎日出版文化賞)を著し、その印税を基に難民支援のための「犬養基金」を設立した。
犬養道子基金ホームページより
万物備乎我(3)
http://be-here-now.cocolog-nifty.com/blog/2008/07/post_d452.html
2008年7月26日 (土) 思い出, 所感 今この時&あの日あの時
犬養毅と我が母校とのご縁からだったのでしょう。
私が母校に在学中だった昭和42年、高校2年の時。犬養元首相のお孫さん(長男犬養健の長女)で、当時評論家として第一線で活躍されていた犬養道子女史が母校を訪問され、講演してくださいました。
季節がいつだったかも忘れてしまったある日の午後。全校生徒が体育館に集合し、犬養道子の講演に聴き入りました。
その時の犬養道子(1921年~)の印象としては、当時40代くらい、小柄で華奢な感じでした。壇上で時に身振り手振りを交えられ、時に熱っぽく話され、何となくエネルギッシュな女性だなと感じたことを覚えています。それと、やや離れた所からながら、見た感じ少しきつそうなお顔立ちで、眼に強い光りのある方だなとも。
山形県下の一高校まではるばるお越しいただきましたのに。何せもう40年以上前のことです。その時の演題が何であったか、またどのようなことをお話になられたのか、今となってはほとんど覚えておりません。
その中でただ一つだけ覚えている話があります。それは「カルチュアとは何か?」というお話でした。(もしかして、演題も「カルチュア」や「文化」に関係したタイトルだったかも知れません。)
それは大略以下のようなものだったかと思います。
犬養道子は当時の女性には珍しく、世界の各地を旅行などでよく訪れたそうです。その中でエジプトのとある砂漠地帯を訪れた時のこと。
砂漠の中に一ヶ所だけ、今で言う「緑化計画」に取り組んでいる所があったそうです。果てしなく砂漠が広がる中で、そこだけ青々と育った草木の群。犬養さんはそれを見て、大変強い感動を覚えたそうです。それを見ながら教訓として引き出したのが、「カルチュア」ということだったのです。
「カルチュア(culture)」は通常「教養、修養」などという意味に使われます。しかしこの言葉には、「耕作、栽培」という意味もあるのです。この土地のように、普通は不毛といわれている砂漠でさえ、緑化しようという意志の下で「cultivate(耕作する、栽培する)」して現実に成果を挙げている。これを敷衍(ふえん)して、私たちの「教養」もかくあらねばならないのではないだろうか?という訳なのです。
つまり教養というものは、何の努力もなしに自ずと身に備わるようなものでは決してない。自分の不断の努力で、そのままでは荒れ果ててしまう心の荒地を一生懸命耕し、そこに(教養の)種を蒔き水を遣り肥料にあたるような経験則を加えてやらなければならない。
また「カルチュア」には「文化、文明」という意味もあるが、古代エジプトの偉大な文明も、当時の人々の不断の努力の賜物で築かれたのではなかったのだろうか…。
*
なお犬養道子は、我が母校を訪れた3年後の1970年以降、ヨーロッパに在住し(1990年代帰国)、1979年頃から世界の飢餓や難民問題と深く関わられたそうです。
また犬養毅の血族としては。その他現在私たちが知るところでは、元国連高等弁務官だった緒方貞子(曾孫)や、エッセイストで奥田瑛二の奥さんでもある安藤和津(孫・ただし長男健の非嫡出子、後に認知)などがおります。 (文中敬称略) (以下次回につづく)
(大場光太郎・記)
【参考画像】
犬養毅元首相 1855年6月4日(安政2年4月20日) - 1932年(昭和7年)5月15日)
「5・15事件」で同日夜絶命した犬養首相を報じる翌日の新聞
大正年間、旧制中学発足にあたり犬養木堂翁(犬養毅)よりご揮毫いただいた、山形県立長井高等学校所蔵の「校訓額」。「萬物備乎我」(万物我に備わる)は、古代中国の思想家・孟子の「真理」の言葉。
(以上、転載終わり)
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