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ダシール・ハメット『マルタの鷹』

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『マルタの鷹』(ダシール・ハメット作、村上哲夫訳 創元推理文庫)


 この本、1、2ヶ月前読み終えたのであるが、読むきっかけとなったのは意外にも、安倍首相のイタリア・シチリアG7サミット(5月下旬)出席だった。つい先ほどのドイツ・ハンブルグG20サミット出席とともに、このシチリアサミットも安倍夫妻にとって森友・加計追及逃れとの非難の声が高かったわけだが、同サミット終了後、公費私物化安倍夫妻は何食わぬ顔でシチリア島に程近いマルタ島(「マルタ共和国」とも)を訪問したのである。

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 今後とも訪う機会がないであろう私は、「マルタ」と聞いて二つの事を思い浮かべた。一つは「マルタ騎士団」そしてもう一つは「マルタの鷹」。マルタ騎士団は、例のテンプル騎士団が源流と思しき、マルタ島で結成され後にヨーロッパ各国に広まったオカルト的秘密結社である。そして「マルタの鷹」は、ハードボイルドというジャンルを確立したアメリカの作家ダシール・ハメットの代表作である。

 そもそも私がこの作品を知ったのは20代後半のことだった。その頃私は欧米の有名な推理小説を集中して読んでいた。小学校高学年時以来なじみのシャーロック・ホームズシリーズ(コナン・ドイル)の全部、密室トリックの名作『黄色い部屋の秘密』(ガストン・ルルー)、推理小説史上の最高傑作と評される『樽』(F・W・クロフツ)、『オリエント急行殺人事件』『そして誰もいなくなった』などアガサ・クリスティの作品群などなど。その過程で『マルタの鷹』もなかなかの作品らしいと知ったのである。

 ただ当時の私は、わが国ハードボイルド小説の草分け、『野獣死すべし』『蘇える金狼』(共に未読)の大藪春彦などのイメージから、ハードボイルド物はバイオレンスとセックスが主体のつまらないものなのだろうと勝手に決め込み、結局『マルタの鷹』は読むに至らなかったのである。なのに40年も経て、「訳有り」夫妻のマルタ島訪問をきっかけに読むことになったのだから、皮肉といえば皮肉である。

 早速読みたくなって当市中央図書館に電話で問い合わせした。「はい、ただ今倉庫に保管してございます。」ということだったので、予約を入れてすぐに借りた。それが冒頭画像どおりの創元推理文庫版『マルタの鷹』である。

 表紙を開いてすぐに、上部にタイトルと原作者名そして下にこの作品の簡潔な要約紹介文がある。以下のとおりである。

「私立探偵サム・スペイドは、若い女からある男の見張りを頼まれた。しかし見張りの役を買って出た同僚はその夜、射殺され、続いて問題の男もホテルの正面で惨殺される。事件の口火を切った若い女、彼女を追って東地中海から来た謎の男、ギャング一味の暗躍ーーその昔、マルタ島騎士団がスペイン皇帝に献上した純金の鷹の彫像。その血みどろの争奪戦に介入したタフ・ガイ、スペイドの大活躍。推理小説の歴史を通じて最高の地位を要求できる傑作ーーとヘイクラフトが絶賛するハードボイルド不朽の名編!」

 上要約でお分かりのとおり、「マルタの鷹」とは、敵、味方の区別もつかないほど謎に満ちた登場人物たちが、皆必死で探している歴史的彫像の名前なのである。そしてそれにはマルタ騎士団が関係していたのである。ここにおいて、私が連想した「マルタ騎士団」「マルタの鷹」はこの作品の中で見事に結びついたのだった。この二つが徐々に姿を現わすのは物語の半ば過ぎくらいからだが、鷹の純金像の由来と共に語られるマルタ騎士団の緻密な歴史検証はそれ自体が歴史ミステリーの趣き、ひょっとしてマルタの鷹彫像は今もどこかに本当に存在するのではないか?と錯覚させられるほどである。

 とは言っても、事件の舞台はマルタ島ではなく、終始アメリカ西海岸の大都市サンフランシスコ。この目抜き通りで、のっけから深夜に二件の殺人事件が起こり、その後息もつかせぬスリルとサスペンスの急展開の連続で驚きの終末を迎えるのである。

 私は再三語ってきたとおり、若い頃は乱読家だったのに、現在は恐ろしく「遅読」である。理由は、視力・目力(めぢから)の衰え、いなそれ以上に知力・集中力の衰えなどいろいろあるのかもしれない。それと、年とともに余計な世間的固定観念や雑念が染み付き、これが純粋な作品世界への没入の妨げとなっているようにも思われる。よって先人たちの、「青年期にしっかり読書しておくべし」という箴言はそのとおりだと思うのである。

 しかし小気味よいテンポでストーリーが次々に展開して行く、面白い作品なら話は別である。どうしても「次」が読みたくなり、スキマ時間をその本を読むのに充ててしまうのだ。その前に読んだ『ルパン対ホームズ』(モーリス・ルブラン)もそうだったが、この作品もまさにそう。比較的短時日のうちに読み終えてしまった。

 ここで原作者のダシール・ハメット(1894年5月27日 - 1961年1月10日)について簡単に紹介してみたい。ハメットは推理小説にハードボイルドという手法を取り入れ、独自のジャンルを確立した作家である。そのことから、作家以前の経歴もさぞ凄いのだろうと思いきや。家庭の事情で学業は13歳まで、以後、新聞の売り子、列車貨物係、鉄道工夫、荷揚げ人足などを経て、終いにアメリカ一の民間探偵社ピンカートン社で8年間探偵業に従事したという。

 わが国でいえばかつての林芙美子や吉川英治のような、苦労人作家なのである。というより、あまり作家修行などした形跡のない人物がこんな凄い小説(長編三作目)を構想・完成させてしまうのだから、何とも恐るべき才能である。

 最後のピンカートン社探偵としての経験が、『マルタの鷹』の主人公の私立探偵サム・スペイドの人物造形に大きく寄与したということはいえるのだろう。時に殴り殴られ、幾多の困難な事態に遭遇しても当意即妙の機転で切り抜ける、ハードボイルド流人物像はシャーロック・ホームズとはまた違った独特の魅力がある。

 この作品は後に映画化(1931年、1941年など)もされている。特に1941年時の主演は誰か?後に『カサブランカ』で世界中を魅了することになったハンフリー・ボガードの出世作なのだそうである。そして、この映画自体名画として知られているようである。

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 以上、簡単に『マルタの鷹』について述べてきた。

 思えば私はここ2、3年、『リヤ王』(シェイクスピア)『ファウスト』(ゲーテ)『トニオ・クレーゲル』(トーマス・マン)『饗宴』『ソクラテスの弁明』(プラトン)『復活』(トルストイ)などを読んできた。いずれも読後すぐに感想を記事にし公開するつもりだったが果たせなかった。名作、名著、古典といわれるものほど、余計変な力が入ってまとめにくいのである。

 しかし今回の『マルタの鷹』のような一種のエンターティメント小説の方が、気楽に読めもし、感想を記しも出来るわけである。とはいえ、今後は読み応えのある名作・古典などもしっかり読み込み、しっかり読後感も綴っていければと思う次第である。

(大場光太郎・記)

参考サイト
【天皇はぶっちゃけ、マルタ騎士団、ガーター騎士団メンバーでした】
http://jfcoach.blog49.fc2.com/blog-entry-171.html

 

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