(諷刺詩) 白カラス族
今年の冬も寒かった。
余寒は3月になっても続いている。
そのためか、街の中でマスクをした人をやたら見かける。
あっちにもこっちにも、マスク族がゾロゾロ、ゾロゾロ
老いも若きも男も女も、マスク、マスク、マスク・・・。
ある日など街行く人の半分ほどがマスク族かと思われた。
ついぞマスクなどしたことのない俺には、
それは実に異様な光景に映る。
ある日の午後電車に乗った。とある駅で、
俺のいる車両の扉が開いて7、8人が乗り込んで来た。
老婦人、OL、女子校生、女の子を連れた若い母親。すべて女だ。
そして全員申し合わせたようにマスクをしているではないか!
『すわっ、女白カラス族の襲来か!』
ぎょっとして、一瞬総毛立つ思いがした。
当今はカラスの尖った口ばしのようなヤツが流行りだ。
だからその時、俺が咄嗟に思ったように、
マスク族をこれからは「白カラス族」と呼ぼう。
「今年の冬はインフルエンザが大流行しています」
テレビがそう言ったらしい。
この時代、おテレビ様のご託宣効果は絶大。
「そりゃ、大変だ」
魔素直な大衆はすぐさま白カラス族に変身だ。
白カラス族は自分の内なる力が信じられず、
「外には恐いものがいっぱいある」
本気でそう思い込んでいる。
マスクをするのは心の弱さの表明だ。
マスクでインフルエンザウィルスを防御しているつもりが、
実は、自らの生きる力を弱くしているのだ。
白カラス族の大量発生を見て、
マスク製造会社、販売店、テレビ局は、
「しめしめ。この冬の恐怖商売もまんまと当ったわい」
貰かって貰かって。笑いが止まらないことだろう。
(大場光太郎)
【注記】
この詩はもっと寒かった1週間ほど前に着想したものです。最近諸事情により記事更新がままならず、本日の作成、公開となりました。その間少し寒が緩み、マスクをしている人が減ってきたようです。
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